小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

《みるくぺーぱ》~春の風のおもいで~

・愛車ヴィッツにかわり、これから(の数年…?)
 まっ白い軽のMが私をサポートしてくれる。

・鉄砲撃ち名人のYさんが立派な自然薯を手に来訪。
 これまで、年末になると熊や猪肉を頂くことがあったが、
 92歳ともなり、とうとう現役を引退された。

・森林公園で、夫とふたり、たっぷり落ち葉拾い。

・スウさんちの、
 「雪のちゃんぷる」コンサートへ。

・夫は高い脚立に上って、山茶花の垣根の手入れ、
 私はせっせと窓ガラスとブラインド掃除。

・雲一つない青空のもとで、
 友人夫妻と能登島民宿&テニス。

・静岡の図書館に『わが恵みなんじに足れり』が
 あったのよ~と、友人から電話。

* * *

この一週間…
まとめれば、たった一、二行だけれど、
その中身は、一つ一つが、一頁、二頁にもなるできごと。
森友裁判の突然の終結も、
石川県立図書館のニュースも大きなできごと。

でも、私は、まず和代さんのこと、
その続きを書かねばと思う。

 ~・~・~・~

20年前のあの頃、休館日の月曜になると、
午後の電車に乗って、金沢に出かけた。
入院している和代さんを見舞った。

何を話したのだろうか、励ましたのだろうか、
彼女の話すのを聴いているだけだったのだろうか
…なんにも覚えていない…。
彼女はエレベーターのドアまで、見送ってくれた。

車の運転時しか必要としないメガネを
うっかり病室に置き忘れたのを翌日、
初対面のご主人が届けてくださったこともあった。

容体が悪化し、意識も次第に混濁していく。
今のうちに、彼女の希望をかなえさせたいと、
ご主人に頼まれて、N氏とK氏に連絡する。
和代さんが関わった文芸活動のリーダーのお二人は
私も存じあげている方たち。
事情を知って彼女の元へ駆けつけてくださった。

* * *

『ひと言・人・こと』(2001.4.16)に紹介した
四行詩がある。

・・・・・

『このあいだのかぜに』(東君平/くもん出版
 
 このあいだの かぜに
 ゆらゆら ゆれた
 いこうか やめようか
 あそびの こころ

     ~

 このあいだの かぜに
 のはらも ふかれて
 しらない くさも
 そろって そよいだ
 
     ~
 
 このあいだの かぜに
 はなしたく なった
 ひみつの ことや
 ほんとの きもち

・・・・・

四月のその日は風が舞って、
本津幡駅前の桜がひらひら散っていた。
ひそかに和代さんを想い、祈った詩…。

この一ヵ月後に彼女は逝ってしまった。

一枚の《みるくぺーぱ》

《こんにちは. カレンダーを見ながら 
指折り数えていた4月になりました.

さてさて. 消費税.  UPの4月.
カントリーパパも や・む・な・く はなはだ心苦しく..
5%計上させていただくことになり..
よろしくご了承 お願い致します  (一同礼)》

◎ モーちゃんたちの
 ホームメイドの牛フン堆肥
 配達いつでも受けつけています.
 完熟なので きれいです.
    10㎏入で500円

◎ リサイクル
 今まで使っていた物で きれいですが
 すこし お古です
 ・ベビーダンス ・食器棚 ・コードのついているベッド
 ・炊飯器 ・本だなのようなサイドボードのような棚

 3月の終わりにたくさんいただきました.
 カントリーの倉庫に置いてあります.
 どなたでも どうぞ.

*・・・*・・・*

24年前のちらしです。

もうどこにも残っていないかもしれません。
ファイルしてあるのは、1997年4月のある日、
河北潟干拓地の「カントリーパパ」の牧場から、
牛乳と一緒に我が家に配達された《みるくぺーぱ》

薄いクリーム色のB5サイズに
手書きの小さな文字とかわいい挿し絵。
隅々までほのぼの感が漂う。

中谷彰宏さんに利用許可をいただいて、
『遠回りの恋のかなえ方』から編集した
図書館キャラクターがコピーされていることも
ふと気になって、、、
書いているのはどんな方でしょう?と
ちらしの番号に思いきって電話したのです。

~はじめまして~

こうして、和代さんに出逢いました。
小さな《みるくぺーぱ》が繋げてくれて。

*・・・*・・・*

1998年にはA4サイズに、2000年にはB4サイズ。
金沢市津幡町内灘町の役立つ情報や
図書館の「出会いの夕べ」の紹介も、
この頃読んだ本のことなども、
楽しげに書いてありました。

愛車とのわかれ

昨日は、愛車と別れた日。

薄いブルーがかった小型車のヴィッツ
走行距離は、50000㎞にも満たない。

あと数年、付き合ってくれるはずだった。
しかし、経年劣化は避けられず、
今回の車検整備で予想外の費用がかかるらしく、
しぶしぶ手離すことになった。

・・・

2004年の11月の寒い日、担当ののっぽさんのKさんから
図書館の駐車場でキーをもらった。

その年の冬の夜、図書館からの帰り道は、
「きんかんなまなま」状態で、
スリップしてするりと一回転したがことなきを得た。
人も車も通らない時刻だった。

ヴィッツとのつきあいが始まって、
これまでの17年間、
少々の傷はあるものの、大きな事故もなく、
穏やかで目立たない風情のヴィッツは、私のお気に入り。
別れのときが迫って、愛おしさが募る。

クルマの運転は実は好きではないのだけれど、
あたたかい小春日和に誘われて、
約束の時間まで数時間しかないというのに、
無性にヴィッツとドライブしたくなった。

* * *

ほら、いつもの運動公園のテニスコート
平日のお昼はさすがに誰もいないねぇ。

・・・

富山との県境にある倶利伽羅峠は懐かしいところ。
長楽寺、倶利迦羅不動寺にまつわるお話を伺いたくて、
山道を運転して、何度も郷土史家の高山精一さんを訪ねた。
高山さんご夫妻はいつも温かく迎えてくださった。
著書、蔵書も寄贈してくださった。
もうどなたも住んでいらっしゃらない。

せっかくここまで来たのだからね、
高山さんが一生をかけられた不動寺をお参りしよう。

階段を上ると、静かな境内。野鳥の声が聞こえる。
雪の立山連峰が青空にくっきりと広がっていた。

・・・

それから、九折(つづらおり)へ。
シベリア抑留の話を語ってくださった大坂喜久治さん。
九折の坂を上りきった明るい峠に、ポツンと建つ墓で、
急逝された息子さんと共に眠っていらっしゃる。

* * *

思い出の地を見せてあげることができたし、
前後左右の記念撮影もしたし、
帰宅した夫に先導してもらって、
金沢まで最後の運転するね。

すると、、、不思議、俄かに空が暗くなり、
激しい雨風にと急変したのです。
まるできもちが通じ合ったみたいに。

21年前の絵葉書

孫娘のフォトマグネット、《LINTU PIENI》の 歌詞、
アメリオオバンの新聞切り抜き、アストラさんの詩、
冷凍大判焼きの解凍法、郵便局からのサービス変更のお知らせ、
甘酒の作り方レシピ、町内入浴施設の無料券、、、
冷蔵庫の扉は小さなものたちであふれている。
そろそろ整理しなくちゃね~~~


お気に入りの絵葉書は谷内正遠さんの版画。
お地蔵さんとネコの《のんびり ゆっくり》が、
ドアを開閉するたびに目に入ってくる。

「のんびり ゆっくり するのも
たまには なかなか よろしい  masato」

はぁい、今、私はのんびりゆっくりですよ~と
つぶやきながら、ふと、表書きを見て息をのんだ。

消印は【12.7.28.12-18】金沢中央郵便局
宛先の下半分に書かれた、小さなぽつぽつ文字。
差出人は図書館の利用者だった和代さんだった。 
目を凝らさないと見えないほどの小さな句点...

・・・・・
「○○さま お手紙ありがとうございました.
俊君がいっしょうけんめい大事そうに届けてくれて、
嬉しそうでした. 私もとっても嬉しかったです.
病院に来て治療をしてから毎日熱が出て
点滴をしています. でも病院に入ったら
ホットしました. 気がはっていたのですね.
子供たちには 夏休みの間 すこし
不便をしてもらい. ガンバッテもらおう~ と.
私は病院でぐっすりとねむれるようになりました.」

・・・・・
そう、実は、
先日の瀬戸内寂聴さん逝去の報道に、
私は和代さんのことが心から離れないままでした。

「寂聴さんのあおぞら説法を聴きに行きたくて、
無理かなと思うけど、、、一緒に行ってもらえませんか」

図書館の廊下で呼びとめられた日のこと。
彼女の願いをかなえてあげられたらよかった…。
寂聴さんの名を聞くたび、私の心はちくちく痛いのです。

2000年夏の絵葉書は、
この時が来るのをじっと待っていた、
としか思えないほどの偶然さでふっと姿をみせた。
いつまでものんびりしている私を急かすように。

* * *

(2001.5.18)『ひと言・人・こと』/図書館で出逢ったKさんを想う

図書館ではさまざまな出会いと、また、時には別れもあります。 
読書が大好き、図書館大好き、やわらかな春の陽射しのような、
桜の花びらのような…Kさん…43歳…をそっと心の中で見送った日。

10年を想う

10周年の「この10年を一言でまとめると~」の特別お題にのっかって、
つい簡単にまとめてしまったけれど、
10年の日々を振り返ってみると、
すんなりまとめられるものではないな~と、
つくづく、、、しみじみ、、、思う。

2011年3月、10年前のあの日、ちょうどあの時間、
私は”風なかま”たちと町議会傍聴をしていた。
議場の議員たちのざわめき、なにかとんでもないことが起きたらしい?!

役場のテレビに映し出されていた信じられない光景に、私たちは声を失った。

・・・・・・・・

東北、関東で大地震/大津波、死者1000人(3.12)
死者・不明 1800人超/福島原発で爆発(3.13)
不明数万人に/Ⅿ9.0世界最大級に修正(3.14)
2号機2度空だき/福島第1原発・燃料棒が全露出(3.15)
死者・不明1万人超/東日本大震災関東大震災以来(3.16)
使用済み燃料冷却不能/福島第1原発・3号機プール蒸発か(3.17)
3号機へ地上放水/福島第1原発・空と陸両面作戦(3.18)

・・・・・・・・

保存してある新聞のその一面には、
一週間にわたって、
かつて見たことのない大見出しが続いている。


* * *

あれから10年、、、
警察庁の発表によると、今年の3月1日時点で、
12都道県で15899人、行方不明者は2526人。

ネットにあった、青木美希(ジャーナリスト)さんの
【どこが復興五輪?「被災者は今も放置」残酷な現実】の記事には、
誘致した復興五輪は名ばかり、アンダーコントロールどころではない、
復興はまだまだ遠いと。

今もなおつらい思いの中で生きている人たちがいる。
求めているのは、ふつうの、あたりまえの暮らし。

まだ10年なのか、もう10年なのか~
* * *

「一枚のCDを探し続けていた10年」

「新聞の切抜きがたまりにたまった10年」

「”風なかま”の友人たちとのささやかな交流の10年」

「そよ風コーラス♪が始まった10年」

「離れてくらす孫たちの成長を楽しんだ10年」

「賢治と詩と古典、月三回の読書会が図書館と私を繫いだ10年」

「ハイキング、山歩きの魅力を教えてもらった10年」

シニアテニスの仲間たちに出逢い、
いろんな大会にも参加するようになって、
「テニスの面白さに気づいた10年」・・・

北陸に住む私には、
「幸せすぎる10年」だった。

開かれている窓に乾杯!

はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」にチャレンジしました。「小さな図書館のものがたり」について知っていただく機会になればと。

ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

図書館での出会い、本や人やできごとを伝えたくて、2001年~2005年、小さな図書館からほぼ毎日発信していた《ひと言・人・こと》にちなんでのネームです。ささやかながらも、当時を語る貴重な『小さな図書館のものがたり』として伝えていきたいとの思いを込めました。

はてなブログを始めたきっかけは?

昨年の4月2日、新図書館のHPからいつの間にか消えてしまったCDデータが見つかって、新型コロナウイルスで暮らしが制限される今だからこそと復元掲載を決心。相談にのってくださったサポーターさんが、以下の私のよくばりな願いを実現するには「はてなブログ」が良さそうだとすすめてくださったのがきっかけです。

1.2001年~2005年の「ひと言・人・こと」の公開、改訂作業。
2.1996年~2005年の9年間の「小さな図書館のものがたり」を記憶を辿りながら少しずつ加筆していきたい。
3.図書館に通った人たち、育てあった仲間たちの思い出、想い、声をつなぎ合わせたい。

自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

2020年5月11日の最初のブログ《「ひと言・人・こと」復活!》です。
さあ一歩!と、おそるおそる投稿した時のどきどき感が思い出されます。
そして、続く14日の友人たちからの《DJ復活?!できるかな》も。
いつか必要になるときがくるなどとは全く予想していなかった、、、
所在が分からなくなってすっかり諦めていた、、、
一枚の宝ものが現れた喜びを分かち合い、背中を押してくれたブログです。

ブログを書きたくなるのはどんなとき?

図書館の思い出はいっぱいあって、書きたいことばかり。
なにから書こうか、どうまとめようかといつも考えてしまいます。
新聞、テレビ、日々の暮らしの中で、すぐにも伝えたい、分かちあいたいことに出あった時には、また優先順位で悩みます。

下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?

図書館を育てあった人たちの思い出、感謝のきもち、心惹かれる本のことなど、下書きというより思いつくままのメモ書きです。

自分の記事を読み返すことはある?

はい、読み返すことがあります。

どんなことを書いたのか忘れてしまうこともあって(あ~後期高齢~)。

好きなはてなブロガーは?

私が訪ねるブロガーさんたち、です。

はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

おかげさま!です。はてなさんは、開かれた窓!

実は、今どきのブログ界とはかなりの距離感があった私。この年になって新たな世界が広がり、好奇心のアンテナも高くなったような気がしています。

10年前は何してた?

北欧を訪ねました。

この10年を一言でまとめると?

うつらうつら眠っていたような。

十五夜の満月

昨晩の部分月食、幻想的でしたねぇ。
午後6時過ぎにほぼ皆既月食となって、
一時間後には下半分が明るくなって、
二時間ほど過ぎると、もう十五夜の満月でした。

夜風は思ったより肌寒くて、あったかいブランケットを纏って、
いつまでもこのまま空を見上げていたいきもちでした。

* * *

小さな図書館の頃、夏休みイベントとして、
何回か「であい講座~星空入門」を開催しました。

図書館のイベントお知らせを見た方からのありがたいお申し出が
あって、広場には天体望遠鏡まで設置されたことがありました。

ねぇ、あの夜のこと、覚えてる?

さすがに、昔のスタッフも記憶がおぼろげになっていたけれど、
みんなでわいわい楽しかったですね~
月と赤、黄、、、の「宝石箱」が見えてすごかったですね~
と懐かしむ。

「宝石箱」のように美しいといわれるその星は、
はくちょう座のくちばしの星《アルビレオ》。
ひとつの星に見えるけれど、望遠鏡で見ると、実はふたつ星。

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にも出ている、
「眼もさめるやうな、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)」

* * *

みんな一列にぞろぞろ並んで、
小さい子は台に乗って、順番に望遠鏡をのぞく。
月のクレーター、ふたつの星に歓声、、、

何年のことだったか、
住吉公園だったか、幼稚園の園庭だったか、
町の様子も変わってしまって、場所さえ曖昧ですが、
こどももおとなも一緒に、時間がたつのも忘れた思い出、
美しい月夜のできごとです。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。