小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

一枚のはがき

お昼前、ひらりと届いた一枚のはがき。金沢で一人暮らしのKさんからでした。
「街路樹の青葉の天蓋が日陰をつくってくれる今日この頃でございます。」から始まって、「走り梅雨の折柄、呉々も御体おいとい遊ばされます様念じ上げます。」で結ばれた流麗な文字。若い頃には染色家の志村ふくみさんのところで修業もされたKさん、
言葉にもたたずまいにもおのずと気品がにじみ出ていて、ちょっぴり若い世代の私たちはいつもはっとさせられている。

第3木曜日に図書館で開催している「古典をたのしむ」読書会に、4年前の3月からバスに乗って通われるようになったKさんですが、冬は足元が良くないのでお休み、春はコロナで中止、6月は?まだ読書会の「みんなのへや」は使用不可でたぶん中止です。

「眼が霞み、足元ヨボヨボに拍車がかかるけれど、集いに御仲間させて頂ける日を心待ちいたしおります。」という昭和10年生まれのKさんの願いは、もうちょっとかかりそうです。

あれは雨の日。町外からバイクに乗って図書館のイベントに訪れた女性が、この機会に知人のKさんを訪ねたいとおっしゃる。運転未熟の私は内心ドキドキしながらも、山奥のそれもとびっきり急なぐねぐね坂をハンドル握ってご案内…辿り着いたわら葺き屋根のお家には、機織り機と囲炉裏があったっけ。

数年前に金沢に引っ越され、イノシシに出会うかもしれない長い坂道をもう上り下りしなくてもよくなったKさんです。

さっそくお礼の電話をすると、飛んでくるブヨならともかく、コロナという目に見えない相手!悩んでいてもしかたがない、歩かないと足腰も弱ってしまうと、受話器の向こうから元気なお声です。こんな中で、読書家のKさんが発見したのは、とある銭湯のミニ図書館?!井上ひさし児玉清小沢昭一などの本なども揃っていて、これまで読もうと思わなかった佐藤愛子の本も手に取って、思いがけず読書の幅が広がったそうな。

いつも新聞を読む老人施設がクローズしていて、郵便局へ切手を買いに行って、偶然に!たまたま!目にした24日の北陸中日新聞記事に、「なつかしさがこみ上げて、一筆ご機嫌伺い」のお葉書でした。その日に郵便局に行かなければ記事のことは知らないままでした。巡り合わせですねぇ。77億の中で、ご縁ですねぇ…。

Kさんの言葉に頷いています。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。