小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

パリの本屋さん

置かれている本は1万冊。
本を通して、人と人とが繋がってほしい、
そんな願いがこめられたステキな本屋さん。
ミシュランガイドなら五つ星!

常連だったヘミングウェイは小説の中に書いている。

 そこはすてきで暖かく
 快適な場所だった
 本棚が並び
 ウィンドウには新刊の本
 壁には故人や
 現存の有名な作家の写真がかかっていた

そんな世界一と呼ばれている本屋さんの名は
シェイクスピア・アンド・カンパニー】

始まりは第一次大戦直後の1919年、100年の歴史をもつその本屋さんはパリにある。
初代店長は牧師の妻、アメリカ人のシルヴィア・ビンチ、32歳。

英語専門の本屋を開き、新しい時代の表現に挑んでいた若い人たちを引き寄せた。
華麗なるギャツビー』のフィッツジェラルドや写真家のマン・レイなども常連だった。20世紀最高の文豪と呼ばれているジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は
米、英で発売禁止になっていた。シルヴィアは支援の手を差し伸べて、
世に送り出し、パリの小さな本屋は世界中に知れ渡るようになった。
才能溢れる若い芸術家たちの心の拠り所となった。
しかし、ナチスがパリを占領して、閉店が余儀なくされた。

シルヴィアの亡き後、全てを引き継ぎ、二代目店長となったジョージ・ホイットマンも、ベトナム戦争に反対し、反戦運動の先頭に立った学生たちを店にかくまうほどの人物だった。
警察から彼らを守るためにひらめいた名案は・・・!!

学生たちにエッセイを書かせ、反体制の学生ではなく作家の卵だとカモフラージュした。その店で寝泊まりする人たちは、自分についての文章を残すことがルールとなって、これまで6万人以上の人がこの店で「タンブルウィード」として過ごしたという。

「タンブルウィード」は、風に吹かれて転がる乾いた草。
チャンスの風を求めて放浪する若者にぴったりだと名付けられた。
スタッフとしてお店を手伝い、その代わりに自由に読書を楽しみ、文章を書くことができる。家族のように寝食を共にし、お金のない若い作家や詩人たちに
生活の場を提供することが伝統になっている。

「BE NOT INHOSPITABLE TO STRANGERS
LEST THEY BE ANGELS IN DISGUISE」

「見知らぬ人に不親切にしてはいけません
彼らは人間のふりをした天使かもしれないから」
という意味だそうです。

こんなメッセージが掲げられた本屋さん。
本が繋ぐ人と人との出会いを大切にする精神は、
3代目の店長となった娘のシルヴィア・ホイットマンに受け継がれている。

店内のあちこちにタイプライターが置かれたスペースがあって、
本を読んだり、文章を書いたりできる。
古いピアノを弾くのも自由。週末には、お客さん同士が
お気に入りの詩を紹介し合うティーパーティーも。

本屋さんも、図書館も、こんな風にあったかくなくちゃ!ね。
わくわく気分で満ち足りた30分…!NHKTV「夢の本屋をめぐる冒険」

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。