小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

『あなた』

「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」

なんと切ない歌でしょう。
2010年8月12日、64歳の若さで生涯を閉じた女性歌人
現代短歌を代表する河野裕子さんが最期に残した歌でした。

この二週間、眠りにつく前に少しずつ読み進めた本は、友人が紹介してくれた
岩波書店発行の『あなた 河野裕子歌集』(永田和宏・永田淳・永田紅/編)。
2016年、夫、息子、娘、の三人の歌人が、15冊の歌集、6585首の中から、
1500首あまりを選んで編集した珠玉の一冊は、読み応えがあります。

第一歌集『森のやうに獣のやうに』から第十五歌集『蝉声』まで、
それぞれの書影と作者のあとがきが掲載されています。

『ひるがほ』『桜森』『はやりを』『紅』『歳月』『体力』『家」
『歩く』『日付のある歌』『季の栞』『庭』『母系』『葦舟』  

 

一首、一首に吸い込まれるようにして、河野裕子の世界に足を踏み入れる。
歌集に添えられた書下ろしの、家族だからこその想いがこもるエッセイ。
選者三人三様の妻、母へのまなざしが、更にそれらの歌を濃密な味わいにする。

1500首もの歌は、家族の物語のようでもありました。

相互貸借の本は延長ができない規則になっているので、
ああ、あと一週間あったらいいのに~と思いながらの返却でしたが、
たとえどれほど延びたとしても、この後ろ髪ひかれる気持ちは変わらないでしょう。
こういう本こそ、自分で購入して手元に置く一冊なのかもしれません。

読んでみてから買う、、、これも図書館の有効利用のひとつ。。。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。