昨日の北陸中日新聞の社説《年のはじめに考える》は【民主主義が死ぬ前に】。
日本学術会議会員の任命拒否問題にはさまざまな学会などの声明や意見が
出たが、中でもイタリア学会のは秀逸。…菅義偉首相には誤った学問観が
あると徹底抗議する文面です。歴史の縦糸を縦横無尽に飛び回り、批判の矢を
次々と繰り出します。…と、その論旨と共に「公務員こそ権力批判を/虚偽答弁
助長したPM(プライムミニスタ―/首相)/権力が正しさ決めるな」の小見出しで、
国民には説明せず、情報を秘匿しつつ、異論を許さぬ手法には、
とことん抗いましょうと社説は論じていました。
イタリア学会の声明とは??すぐに、ネットで見つかりました。
会長の藤谷道夫(慶應義塾大学教授)さんが執筆した声明文でした。
万有引力、相対性理論から始まって、ガリレオ裁判、、、
カフカ、ソルジェニーツィン、、、
そして、マルティン・ニーメラー牧師の言葉も挙げて、、、
ナチスが最初、共産主義者を攻撃した時、
私は声を上げなかった。
なぜなら私は共産主義者ではなかったから。
社会民主主義者が牢獄に入れられた時、
私は声を上げなかった。
なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。
彼らが労働組合員を攻撃した時、
私は声を上げなかった。
なぜなら私は労働組合員ではなかったから。
ユダヤ人が連れ去られた時、
私は声を上げなかった。
なぜなら私はユダヤ人ではなかったから。
そして彼らが私を攻撃した時、
私のために声を上げてくれる者は誰一人残っていなかった。
「公金は自民党のためのものではなく、国民のためのものである。
国民全体の奉仕者である公務員を、自民党のための奉仕者に変えようとする
暴挙は許されない。」と声明文は実に明快に指摘しています。
今日の新聞の二面にはその藤谷道夫さんのインタビュー記事がありました。
「博識に裏打ちされた豊かな表現で異彩を放った」その方は、1958年生まれ。
なんと、学生時代に故須賀敦子さんに師事したとある。。。
ああ、須賀敦子さんに学ばれた方なら、さもありなん。
須賀さんの作品に触れると、誰もがやさしく、あたたかいきもちになる。
心が洗われるような、詩のようなエッセイ!
私の大好きな作家のおひとりです。
藤谷さんが須賀さんに出会ったのは大学3年の秋。
イタリア語のイの字も知らぬ仏文科の藤谷さんたちの思いに応えて、
一緒に読んであげましょうと須賀さんが言ってくださって、
5年間に及ぶダンテの『神曲』講読会が始まったこと、
そうして一人のダンテ研究者が生まれることになったこと、、、
10年おきに出版された3冊の須賀敦子追悼特集(河出書房新社)のどれにも、
好奇心に満ちチャーミングで誠実だった師を敬慕してやまぬ言葉がありました。
~先生が、私たちに費やされた時間はどれほどのものになるでしょうか。
私たちは仕事や業績をその人の価値と同一視してしまいがちですが、人格は
そうしたものに還元できるものではないことを学んだように思います。~
須賀敦子さんに思いを馳せ、私はイタリア学会の声明を何度も読み直しています。