小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

60年目の恋文

NHKBSで「あの夏 ―60年目の恋文―」(初回放送は2006年)を観た。
こんな素敵なことがほんとうにあったなんて。。。

2003年9月24日、82歳の川口汐子さんの郵便受けに一通の手紙が届く。
差出人の名は岩佐寿弥さん。昭和19年、教育実習についた19歳の
雪山汐子さんが受けもった四年生男子、34人のうちのひとりだった。
8月22日の深夜、録画してあったアーカイブス番組の中に川口さんを見出し、
かつての教生先生へのひそやかな慕情を吐露する分厚い手紙となって、
慎ましやかながらドキドキするような9か月間の往復書簡へと繋がった。

   … ・ … ・ … ・ …

9月21日~9月26日~10月2日~10月12日~10月22日~11月4日~
11月11日~シチリアより2度、絵葉書。年賀状の交換~
2004年1月11日~1月25日~2月14日~2月20日~3月6日~
3月30日~4月22日~4月27日~5月4日~5月19日~5月21日

   … ・ … ・ … ・ …

『昭和万葉集』のDVDから始まった手紙のやりとりは、
4月27日の岩佐さんの手紙に応える形で、奇蹟の再会となった。

「60年ぶりの、はじめましてのような、おひさしぶりのようなご挨拶を
いたしましょう。眼がかすみ、杖に縋った八十媼はたいへんシャイに
なっております。では五月十四日、姫路JR駅、……」

「人は誰でも過去を呼び戻して、生き直すことができる」というが、
短い実習期間、天性の明るさと優しさで、真剣に少年たちに向き合った
雪山先生なればこそ。そして、事細かに記された当時の教生日記と
古い写真を大事に保管されていたからこそ。
指導教官の白山勇先生の存在も大きい。
歌人童話作家、かたや映画作家・TVディレクター、
言葉を大切にし、かつ、戦争を問い続けるお二方なればこそ。
この不思議な再会の物語がこうもみごとに展開していったのだと思う。

出版された本があると知って、すぐに図書館で借りた。

『あの夏、少年はいた』(れんが書房新社/2005.5.14発行)には
その往復書簡と教生ノートの抜粋も掲載され、最後のページには川口さんの歌。
  
  少年も少女も齢重ねたりふつふつと粥煮ゆるときのま  

 

川口さんは2011年7月11日、87歳で、
岩佐さんは2013年5月4日、78歳で亡くなられたと知って、
大いなる運命的なものを感じずにはいられなかった。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。