小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

小さな火から始まる

年末の電話で、遠くに住む友人が紹介してくれた一冊は、
『天上の葦』(太田愛KADOKAWA/2017)

友人からぜひ読んで!と渡されたというミステリー上下巻。
その本を読んで、友人もまた周囲の人たちに薦めているのだという。

  その時は小さな火に過ぎないかもしれない。
  しかし、、、、常に小さな火から始まるのです。 
  
  すぐに大きな変化を実感することはないかもしれない。
  同じようなことが繰り返されながら、
  何年か、あるいは何十年のうちに、
  誰もが想像しなかった事態に至るのです。

  今だから、ぜひ読んでほしいのです。

その言葉を受け取って、さっそく手にしたその本は、
テレビの生放送中に、公衆の面前で息絶えた老人の不審死をめぐる物語だった。

  ― 白昼、96歳の老人が渋谷のスクランブル交差点で
    何もない空を指さして絶命した。―
  

ジャーナリスト、テレビ局、警察、公安、政府関係者が
複雑に絡み合うこの作品は、何冊もの参考資料を元に構成され、
有無を言わせぬ説得力があった。

謎が解き明かされ、闇が明るくなった瞬間、
得も言われぬ深い感動に満たされる作品だった。
真のジャーナリストへのエール!
そして私たち老いゆく者へのエールでもあった。


執筆の動機について太田愛さんは述べている。

  …日本の空気が危うくなっている。
    いま書いておかないと手遅れになる…

 「国が危ない方向に舵を切るときに、いちばん顕著にその兆しが表れるのが
 報道です」「その次が教育」「報道というのは情報を操作して、非常に巧みに
 空気をつくっていきます」

 「報道は政府広報ではないんです」
 
 「勇敢にして聡明、常に冷静でバランス感覚を失わない。
 決して感情的にならず、権威に臆さず、、、丁寧に言葉を選んで
 伝えたいことを的確に伝える」人気のあるジャーナリストの降板。


すぐに頭に浮かぶのは「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスター。
2014(平成26)年7月、集団的自衛権をめぐる放送で、
当時の菅官房長官にインタビューで鋭く問題点を問いただし、
結果、不本意な降板となった。

国谷さんこそ「余人に代えがたい人」だった。
国谷さんの降板は、小さな火の始まりだったのではないかと思う。

 

森友学園加計学園問題に始まり、「桜を見る会」、検察官の定年延長問題、
公文書改ざん、廃棄、法律解釈の強引な変更…やりたい放題の政権、
その政権を支えた菅さんが首相となった。
コロナ対策も不透明な中、五輪組織委の森会長の女性蔑視発言は、
軽率とか「失言王」とかのレベルを超えて、
日本社会の不都合な現実を世界に露呈した。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。