小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

Rの思い出

この一年余り、目の当たりにした香港、ミャンマーの惨状。
市民たちの自由は残酷な形で奪われていった。
武器も持たずに抵抗し、世界にあれほど訴え、
助けを求めていたのに…

心痛むことが、世の中にはなんと多いことだろう。

***

そして、アフガニスタン
これからどうなっていくのだろう。
国外逃亡をめざし、空港に人々が押し寄せる。

中村哲さんが一生を捧げ、
平和のために命を懸けた国が
混乱の最中にある。
女性たちは、子どもたちは大丈夫だろうか。

* * *

10年前、北欧のとある駅で娘と待ち合わせした時、
大学で一緒に勉強しているRを紹介してもらった。
11月の冷たい雨の日だった。

その国での資格を得るために、
一緒に学んでいる外国人の学生は他にも数人いて、
娘は最年長だった。年下のアフガニスタン人のRとは
互いに助け合い、頑張りあい、心が通じあうらしく、
家から離れて寮暮らしをしている娘から、
電話で何度かその名前を聞いていた。

あと2週間で私の3ヶ月の滞在期限が近づく頃、
特急で2時間ほどの娘のところへ出かけたのだった。
講義が終わる約束の時間まで2時間近く、
ひっそりとした駅のベンチに座り、暇つぶしに、
ひたすら、辞書の言葉をノートに写し取っていて、
娘に声をかけられるまで気づかなかった。

翌日、Rは言ったそうな。
「日本人は真面目だと聞いていて、
(娘を見て)本当にそうだと思ったが、
二人も真面目な人を見て、
たしかにそうだと確信した!」

話に聞いていた通りの好青年。
何を話したかほとんど思い出せないけれど、
中村哲さんのことを伝えると驚き、感謝していた。
優しそうな大きな目が印象的だった。

私が会ったたった一人のアフガニスタン人。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。