小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

能登絶唱うたの旅

4月27日から火曜日の中日朝刊で連載していた
『詩歌巡礼十二景~能登絶唱うたの旅』が
このほど終了。

執筆されたのは、能登半島広域観光協会相談役、
県観光スペシャルガイドとして精力的にご活躍、
2003年3月、『出会いの夕べ』のゲストとして講演して
くださった藤平朝雄さん(82歳/輪島市在住)。

能登半島を訪れた近代文人12人の詩歌、その背景も、
初めて知ることばかり。藤平さんの解説に興味津々、
火曜日がどんなに待ち遠しかったことか。

順に、
折口信夫松本清張高浜虚子土屋文明、沢木欣一、
水原秋桜子山口誓子、野口雨情、結城哀草果、
佐々木信綱、与謝野晶子村上元三

* * *

巌門近くの松林に建てられた松本清張の歌碑。
②《雲たれてひとりたけくる荒波をかなしと思へり能登の初旅》

昭和34年発表の『ゼロの焦点』に誘発され、
自ら断崖から投身した女人の死を悼んだこの弔歌は、
過去の因果な境遇がまわりまわって引き起こす、
幾多の悲運女人への鎮魂歌。

それにしても、
清張が現地を訪れたのは翌35年と知って驚きました。   
地図や想像のみで、あの印象的な能登の冬を描写したとは。

* * *

曽々木の揚げ浜塩田の句碑。
⑤《塩田に百日筋目つけ通し》

実は、第5回目をうっかりしてみのがしてしまい、
図書館の書庫から3ヵ月前の新聞を取り出してもらい、
戦後の社会性俳句を主唱した沢木欣一さんの
代表句と知りました。

塩といえば、珠洲地域でただ一軒、
揚げ浜式製塩を守り続けてきた角花さんの労苦の塩を
友人を通して手に入れて、一つまみずつ、
だいじにだいじに使っています。
深い甘味のある塩です。

* * *

藤平さんに初めてお目にかかったのは、
19年前の2002年11月24日。

当時、輪島キリコ会館館長さんでした。
図書館をいつもあたたかく応援してくださった
山崎久雄先生(山の家~昭和の音と映像の資料館主)、
ご友人の北陸映像の水上裕規さん(内灘町)、
お二方のお声かけ、ご紹介あればこその出逢いでした。

第4日曜日のその日はちょうど休館日、
静かな午後でした。

東京都出身の藤平さんが、
能登に暮らすことになった経緯、日頃のお仕事、、、
能登愛あふれるお話をゆっくりうかがって、
私も図書館紹介をさせていただいて、
3月7日の「出会いの夕べ」のテーマも決まりました。


☆ ☆ ☆

その日の二時間ほどのであい、
『ひと言・人・こと』の数行が、
遠く離れた人たちをつなぐことになるとは、
思いもよらないことでした。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。