ふと思いたって、、、というより、
かなりプレッシャーになっていた諸々の整理、
涼しくなってきたこともあって、
気合を入れて取り掛かった。
とにかく、積み重ねたままの資料や書籍、
友人、知人、家族からの手紙類、
保管、居場所を明らかにしよう。
さて、封書を開いて読みなおしてみると、
だいじなことなのに、
すっかり忘れてしまっていることも結構あって、
自分の記憶の頼りなさにがっかりしたり、
友人たちの温かさに浸ったり、横道にそれたりで、
こんな調子では、なかなか計画通りにはかどらない。
* * *
ふっと目に入ったのは、
『私には夢がある~谷内正遠木版画集~』(芸艸堂/2000)
お地蔵さんや猫、古里の風景、ほっとする言葉たちが登場する。
「おかげさんで」
「きのう きょう あした ほのぼのといきる」
「のんびり のんびり」
「一人じゃないよ 風もあるし 光もあるよ」
「ふと気がついてみたら 何でもないこと」
山頭火の句、賢治の「雨ニモマケズ」の作品もある。
我が家に飾ってある作品は「そうか そうか」。
どんなことも無条件で聴いてもらえそうな言葉に魅かれた。
谷内正遠(たにうち まさと)さんは、
津幡町の山間、河合谷地区にある慶専寺の副住職。
25歳の時、独学で版画を始められた版画家である。
数年前より、先生の壁掛けカレンダーを
ご縁のある方から頂いている。
2ヵ月毎にめくる『石仏カレンダー』に、
心が洗われ、あったかいた気もちになる。
先生の体調があまりよくないらしいと耳にしてはいたが、
この7月に亡くなられたと知って驚いた。
特に今年のカレンダーは、
ご自分のいのちを重ねていらっしゃるようで心に沁みる。
・・・・・
《1月/2月》は、
「一歩一歩あゆむ人生 どの一歩も無駄はない」
《7月/8月》は、
生きていることは生かされていること
生かされていることは生きていること
悦び よろこび
慶び よろこび
歓び よろこび
《9月/10月》は、
野外にをくりて夜半のけふりとなしはてぬれば
ただ 白骨のみぞのこれり(白骨のお文より)
* * *
35、6年前になるが、一年間、公民館の夜の版画教室へ通って、
初めて彫ったのは「チューリップ」と「葡萄」、
私の生涯でたった二つきりの多色刷り版画である。
あれ以来、彫刻刀もバレンも、押し入れに眠ったまま…。
一緒についてきて見学していた子どもたちも大好きな、
優しい先生だった。