小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

手帳の色

ある方のブログに、来年用に見つけられたという
素敵な手帳のことが書かれていた。
一年間を共にするのですから、
気に入ったものを選びたいですね。

* * *
現在、私が使っている手帳は9㎝×17.5㎝。
昨年の12月28日のブログに書いた図書館の年末の
イベント《いいものグッズプレゼント》で残っていた
二冊のうち、幾分サイズが大きい方のもの。

町庁舎の工事関係会社からの挨拶がわりの手帳は、
会社のPR、鉄筋の径と断面積の表、印紙税額一覧表など、
その方面の方には役に立ちそうな頁がありますが、
ペンを挟むことができないし、記入欄も小さすぎ、、、
使い勝手が悪くて、今のうちに気に入った手帳を探そうと
思い始めたその時、ある番組を見たせいで(おかげで?)
思いとどまりました。

「栄光やお金はこの世のものだからね。
去る人はそういう物はなにもいらない…
例えば僕がこの椅子がとても好きでも、
僕の方から消えるから何ひとつ自分の物はない」

と、糸島のアトリエで、その方が身をまかせ、
好きだとおっしゃるゆったりした椅子の色が
小さな手帳の色ととてもよく似ている!!
何色と言えばいいのか、深い濃い青…ただその一点で、
私は不便な小さな手帳を手放すことができませんでした。

* * *

それは今年の1月に放映された、
「こころの時代~100年のアトリエ 画家/野見山暁治

100歳を迎える野見山さん、
穏やかで、柔和で、ふっと寂しげに遠くを見つめる。
飄々として、噓のない正直すぎるほどの言葉の連続に、
思わずくすりとしてしまった。

1970年代、戦死した画学生の遺族を訪ね歩いた…
その思い出話を聞いた時、え?もしかして「無言館」?
初めて「野見山さん」がその方だと一致したのです。

~・~・~・~

数年前の秋晴れの日、
「今から出かけようか~」
突然の夫の申し出に即座にOK!
新聞やテレビでも紹介され、
いつか訪ねたいとの願いが叶えられたのは、
私たちの結婚記念日。

1997年に開館した「無言館」をようやく訪ね、
一枚一枚の絵とゆっくり対面できました。
館主の窪島誠一郎さんの情熱にも感動しました。

~・~・~・~

「こころの時代」がきっかけで、
無言館」についてあらためて知りたくなって、
昨年の春は関係する本を読みました。

『「無言館」ものがたり』『無言館ノオト』
『「無言館」への旅』『無言館の青春』、、、
そして、『父への手紙』、
『親を愛せない子、子を愛せない親たちへ』、、、

窪島さんの波乱の生い立ちを知ることになり、
水上勉の作品にも繋がっていきました。

* * *

こんどは、手帳が「野見山さんを読みたい」のきっかけとなり
本をリクエストして、県立図書館から相互貸借で届いた2冊です。


☆『野見山暁治 人はどこまでいけるか』(平凡社/2018)

「欲張りや、名誉欲のある人は大きらい。
卑しい人、多いんだ。これまでそういう人と
手を結んだことはないし、付き合っている人が
そういう人だとわかったら、すぐに袂を分かつ。…」

九条の会》の役員でいらっしゃる野見山さんは、
平和はもっと過酷な戦いを覚悟しないと得られるものではない、
どうすればいいのか、、、と。


☆『100歳記念すごいぞ!野見山暁治のいま』(青幻舎/2021)
2021年開催の展覧会の約60点の作品が収録されています。

「ただ描いていた。やたら描きなぐっていた。
道路いっぱい、チョークで、どこまでも広がる。
埃だらけ、凸凹の画面。そのまま描き続けて、
いつの間にか百年たった。、、、」

行ってしまった/どこに居る/主役だろ/本当は言えない
誰だろう/早く決めよう/みんな友だち/振り返るな/ …

抽象画のタイトルが面白すぎます。

 

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。