小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

《みるくぺーぱ》~風の旅~

☆図書館ではさまざまな出会いと、また、時には、別れもあります…

桜の花びらのような…Kさん…43歳… (『ひと言・人・こと』/2001.5.18)より

*・・・*・・・*

イニシャルのKさんは和代さん。

好物の食べ物は~?   
好きな音楽のジャンルは~?  
いちばん好きな花は~? 

ご家族や生い立ち、
彼女のプライベートなことについて
私はほとんど知りません。
一緒にお茶を飲んだこともないのです。
なのに、ある日突然、入院の事情を
知らされて私は絶句してしまいました。

*・・・*・・・*

図書館では、さまざまな物語が生まれる。
素敵なこと、不思議なこと、ワクワクすることや
多くの人は知らないけれど、哀しく、
ひっそりとした命のものがたりもあることを
日々の記録に一行でも書きとめよう、、、

祈りにも似た想いが、
『ひと言・人・こと』を書くきっかけの一つに
なったのだと思います。

* * *

翌年のお盆を迎えた頃だったでしょうか。
和代さんのお母さんと伯母さんが来館されました。

「町に根ざした図書館が好き(西川玲子)」
「貸出し数が55万5555冊/開館5周年の津幡町図書館」
「図書館の館長珍らし女にて出入りの人等に笑いふりまく(義風)」

図書館関連の新聞記事や投稿を
わざわざ切抜いて、一枚の紙に貼ってくださって、

その余白には、
「館長さん 有難うございました」の言葉と、
先だってしまった娘を偲ぶ歌と句。

「逆縁の別れとなりし子の位牌真ん中にポツリと空いた椅子一つ」
「惜しまれて花は静かに風の旅」

* * *
風になって…風の旅、を続けているのでしょう。

和代さんから手渡された読書感想文です。

 
 ~ ② ~

千葉敦子 著『”死への準備”日記』を 読んで

フリーランサーのジャーナリストとして. 
ニューヨークで. 女性ながら一人で
 自立した生活をおくり. 6年以上にわたる癌との闘病生活の中で
14冊の本を出した. 彼女の最後の本が これです.

病気の進行. 死が 目の前にせまりくる中での 生
ニューヨークの高層アパート で 時代の最先端を見て.聞いて.
考えることを望み. 自分の病をも. 最新の医療への挑戦とし. 
それを仕事として 書き残そうと走り抜けていった人.

同時進行として側にいる人ではなく.
本を読む手段を通してなので
この人の生き方を全体から見おろすことが出来た.

彼女の写真が一枚. 強く輝く 大きな目。きっと. まっすぐな
視線で. エネルギィシュに 話をする人だろう.
こんな人もいた ということをきちんと知り

 そして. 私は....。もっとゆっくりと 病をいとおしむ.
   田舎のあぜ道でいい. 野に咲く花を愛でながら.

                          ○○さんへ      和代

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。