明日はゴミ収集日。
小さなゴミ袋を出しに行って
ふっと星を見上げていたら、
谷川俊太郎さんの『生きる』が
あふれてきて、胸いっぱいになった。
この詩に出会ったのは20年前の
第30回「出会いの夕べ」。
福井県三方町図書館の車いす司書さんの
河原正実さんが語りかけた《平和・命》
「 …最後に河原さんが大好きな詩、
谷川俊太郎さんの『生きる』を
静かに想いを込めて聴かせてくださった。
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと… 」
~『ひと言・人・こと』(2002.7.14)~
* * *
時差7時間、
いま、ウクライナは
夕方の六時、夜がはじまる。
いま『生きる』の一行一行が、
これまでにも増して愛おしい。
そして切ない。
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生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
『ポケット詩集Ⅱ』(2001.10/童話屋)より