小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

『てのひらごよみ』

「お誕生日のプレゼントです」と
一昨日、頂いたかわいい袋。

先月は誕生月だったけれど、
思いもかけないこと、、、いったいなんでしょう?

ふくろの中身は一冊の本と
やまねこご夫妻からのふんわりメッセージの
《atelier tasola》のポストカード。


☆~☆~☆~☆~☆

おたんじょうび
おめでとうございます.
このほんを
プレゼント
いたします.
また たのしい
おはなしを
きかせてください.

やまねこ/たろう&はなこ  2022

☆~☆~☆~☆~☆

ていねいに千代紙でカバーがかけられた本を開いて

えっ!

一瞬信じられなくて息をのんで
それから胸が熱くなって…

なんとお礼を申しあげたらいいのでしょう。
信じられない贈りものでした。


めずらしくスウさんお休みの一月の読書会で、
たろうさんが披露してくださった古書本。
1月11日、12日、13日のところを読んで、
それからお雑煮の話で盛り上がりましたねぇ。

ほんとにすごい!
どうやって見つかりましたか?
もし、またそんなことがあったらよろしく。

そんなお願いはしたけれど
ずっと抱きしめていたくなる本です。
よほどの事情がないかぎり、
市中に出回るはずもありません。
どうやってこの本を手に入れてくださったのでしょう。
それとも、、、もしかして、、、
だいじな一冊を譲ってくださった?

* * *

その本というのは
『てのひらごよみ』(水野スウ・絵と文/1976/立風書房

スウさん20代後半の
きらきらまぶしい、てのひら詩の365日、
あったかい手書き文字の歳時記です。

「この本には、始めの頁も終りの頁もありません。
どこから読んでもいいのです。」

スウさんのいうとおりに
ためしに、私と夫の誕生日、結婚記念日。
目をつぶって、ぱっとひらいてみたり。


今日の頁には…

 風が スキップしてゆくよ
 野原を
 みどりに ふくらませながら。
 春の匂いの
 エアメール とばしながら


次の頁、4月17日は…

 奥能登の春は
 時刻表のないローカル線、
 待っても待ってもこない春。
 金沢から 七尾線にのって二時間、
 能登路は まだ眠っていました。
 …と そこへ とつぜん おとぎの国 です。
 「のと鹿島」の無人駅は
 すっぽり 桜の花のトンネルです…。
  トンネルのむこうは ―
 穴水港の 青い 深い海の色。


* * *

「…きりりんさんは私の書いた『てのひらごよみ』が大好きで、だけど絶版で手にはいらないとわかった時、びっくりするような行動に出た。図書館から『てのひらごよみ』を借りてきて、はじめのページからしまいまでまるごと一冊、本のすべての文字を自分のノートに書き写し、文字通りハンドメイドの『てのひらごよみ』をつくってしまった!というのです。」(紅茶なきもち/2020.5.10 より)

二年前の3月の「とくべつ紅茶」で
栞アーティスト、きりりんさんならではの
気の遠くなるような素敵なお話をうかがって
あきらめていた『ひと言・人・こと』のデータを
もういちど探してみようと決心した私。

どれほど探してもみつからず、
あきらめて別の方法まで模索した…データが
おかげで、見つかって、復元できて、
こうして
《小さな図書館のものがたり》を発信したり
ステキなブログに出逢ったり…

『てのひらごよみ』からつながって。

* * *

『てのひらごよみ』は希少本。
県内では能美市図書館のみですが、
新潟、愛知県内、大阪府内の2館、
神奈川、福岡、長崎、宮崎、鹿児島の各県内の1館、
全国の12の図書館に所蔵されています。
相互貸借を利用することができます。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。