小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

センス・オブ・ワンダーの『絵暦』

玄関に飾ってある屛風仕立ての絵暦は旧暦です。

旧暦では、昨日から八月、〈葉月〉です。
カレンダーの日付と微妙にずれているので、
うっかり開き忘れることもたびたびです。

新月」の日から一日が始まります。
「三日月」~「上弦」~「満月」~「下弦」、
日々の月の変化が表記されているので、
夜空を見あげ、ついお月さまを探したくなります。

縦20㎝、横10㎝、すっきりしたデザイン、
情趣ある和紙の表紙。武生ルネサンス出版部発行で、
高校時代からの友人、三木さんの企画・編集です。

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今月の写真はオンブバッタです。
好物のシロタエギクの葉っぱを齧る写真がなんともユーモラス。

〈文月〉は美しい翅を広げたカラスアゲハでした。
池田町部子山に咲くテンニンソウの蜜を吸っています。

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昨年は「越前の行雲篇」、その前は「越前の里山と生き物篇」。
草花、虫たち、川の魚たち、越前富士、鳥たち、
伝統行事、生物多様性、名木、年中行事、建物、、、
ふるさと越前にこだわって、歴史、文化、自然を題材に30年。

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「今年の絵暦はまさしくあなたの図書館のテーマ、《センス・オブ・ワンダー》ね」と便りにありました。

26年前、私が図書館長に就任したお祝いに、友が贈ってくれた『センス・オブ・ワンダー』の一冊。それは、小さな図書館の9年間の原点となりました。

 

絵暦には、三木さんによる解説文が付されています。

~旧暦『絵暦─越前の小さな自然篇』の楽しみ方~

 朝日が射し始める頃、外に出ると木々に張られた蜘蛛の巣に朝露がかかって、キラキラ輝いています。 百人一首の歌、「白露に風の吹きしく秋の野はつらぬき留めぬ玉ぞ散りける」が思い出されます。 考えてみますと、昔の和歌には、現代では気づかずに過ぎてしまっている美しい自然描写が沢山見られます。人工的なものが殆どなかった時代には、きっと自然の中に色々な神秘性を感じていたのだろうと思います。 
 1962年に、地球の環境汚染と破壊の実態を告発した『沈黙の春』を完成させたアメリカの海洋学者レーチェル・カーソンは、最後のメッセージとして、『センス・オブ・ワンダー』を私たちに残してくれました。 彼女はその本の中で、次のように言っています。

「子どもといっしょに自然を探検するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感性にみがきをかけるということです。 それはしばらく使っていなかった感覚の回路を開くこと、つまり、あなたの目、耳、鼻、指先の使い方をもう一度学び直すことなのです。 私たちの多くは,まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。 しかし、目にはしていながら本当は見ていないことも多いのです。 見すごしていた美しさに目をひらく一つの方法は、自分自身に問いかけてみることです。 『もしこれが、今までに一度も見たことがなかったものだとしたら?もし、これを二度と再び見ることができないとしたら?』と。」また「自然のいちばん繊細な手仕事は、小さいものの中に見られます。」とも述べています。

 今回の絵暦は、林昌尚さんが、自然に対するその卓越した感性と撮影技術で、身近なところにある自然の美や神秘性を私たちの目に見える形にしてくださいました。(三木世嗣美)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。