小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

彼女の祖国

圧巻のドキュメンタリー「正義の行方~飯塚事件~30年後の迷宮」についてのブログhttps://hitokoto2020.hatenablog.com/entry/2023/01/19/165458
を読んだ知人から、先日の再放映を見たと聞いてちょっと嬉しい気分です。

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実は、12月28日の同じ日、あのドキュメンタリーのすぐ前にもすばらしい番組がありました。一昨日にはその再放送もありました。

フジコ・ヘミングショパンの面影を探して~スペイン・マヨルカ島への旅】

フジコファンの多くの方がご覧になったかもしれません。

90歳になられたフジコさんは、腰が曲がり、歩くのにも助けが必要でしたが

ピアノへの情熱は衰えることなく
ドイツでコンサートを終えた直後、パリに戻り、
その翌日に出発という強行スケジュールで
ショパンが暮らしたマヨルカ島への旅でした。

それは、フジコさんの長年の夢。

いたずらな妖精のよう、神秘的な魔女のよう。
ショパンを最も感じられるという「カルトゥハ修道院」での
小さな演奏会のフジコさんは神々しいまでに輝いていました。


まさに《魂の演奏会》


最近はちょっと古典的な弾き方をしたくなったとフジコさんは率直に語ります。

「みんなが私の音は最高にきれいだって言うから、それだけを重んじてあとはシンプルに弾こうと…」
「一生懸命、神様にお祈りしながら弾いてた。間違いないように。そうしたらうまくいった。この前よりは間違えなかった」

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毎年、ウクライナでコンサートを開き、支援を続けているフジコさん。

「私はどこが祖国だか…祖国ってわからない。
日本でもないし、スウェーデンでもないし、ドイツでもないし、
私はどこの国も好きだし、どこの国も攻めていこうなんて思わないし、
そんなのとんでもないことだわ」

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ところで、年末の1時間半が、今回は50分に編集されていました。
どこが違うんだろうか?細かいことが気になって見なおして
おかげで、何度も何度も、すばらしい演奏を聴きました。

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かつて“あなたには愛国心、ないんですか”と問われて
“ない”と言い返したやりとりや
恋愛遍歴に関しての嘘のないきもち…

「私は結婚して子どもがいたらいいなぁと思ったけど、
全然ロクなヤツがいないからさ、
結婚するまでにいかないでみんなダメになっちゃったけどね。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりして
本当にいやぁだめだなぁと思っちゃう。
あんなことしなきゃよかったのになぁって思う。
後悔がいっぱいありますよ。

ショパンジョルジュ・サンドがいたじゃない。
だから幸せだったと思いますよ。
しかも男だもん。もっと強いよね。

私は恋人も誰もいなかった。
ひとりだったから苦しかったですよね 」

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これは50分にはない場面です。
孤独の哀しみを吐露するフジコさんが
ますます大好きになりました。
どうぞどうぞ、いつまでもお元気で。


☆図書館には『フジコ・ヘミング 魂のピアニスト』(求龍堂/2000.5)はじめ、関連本があります。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。