小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

ふたりだけで《銀河鉄道の父》

6月1日の読書会「宮沢賢治を読むつどい」。いつものようにみんなで「星めぐりの歌」をうたい、『注文の多い料理店』の素敵な序を読み、その日は『或る農学生の日誌』を始めるはずでした。

ところが、細川律子さんの「昨日《銀河鉄道の父》をみてきたんです」に、Mさんも既にみたよとか、もう近くの映画館では終了したようだとか、金沢のどこそこの映画館ならいいねとか、互いにスマホで調べ始め、しばらくは映画の話題でもちきりでした。2023年は、賢治さん没後90年。もう一ヵ月も前から上映されていること、初めて知りました。

読書会の翌日、近くのイオンでまだ上映されていると知って、読書会なかまのSさんにお知らせして、、、なんと、ふたりだけで大画面を独占するという贅沢過ぎるひとときを過ごしました。

生前に自費出版したのは『注文の多い料理店』と『春と修羅』の二冊だけ。無名作家のまま、37歳の若さで去った賢治さん、実は・・・“ダメ”息子?!

賢治さんのイメージからほど遠い菅田将暉くんに戸惑いつつも、フィクションの違和感はいつしか薄れ、真実かもしれぬ、あり得るかもしれぬと思うほどでした。父・宮沢政次郎役の役所広司さんの、魂の“雨ニモマケズ…”に涙しました。その声が今も聴こえて胸が熱くなります。

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原作は2018年第158回直木賞の『銀河鉄道の父』(門井慶喜/講談社/2017)。

“フィクションを作る時でもしっかりと調べなければいけない。周りを調べて固めていって、最後に残ったものを想像力で補うようにしています。これを僕は「根拠のある想像」と呼んでいる。”という門井さん。

この作品を書くことになったきっかけは、お子さんのために買った学習漫画だそうです。勿論、政次郎は少ししか登場しませんが、幼い賢治が入院したとき、自分も病室に泊まり込んで看病したというエピソードに衝撃を受けたのだそうです。明治時代の家父長制全盛期に、こんな過保護な父親がいたのかと。

 

「賢治の本は世の中にたくさんあるけれど、調べた限りでは、政次郎さんの本はない。僕が書けば、それが最初の本になる。読者に驚きをもって受け止めてもらえるのではないか。」

 

残念ながら、実は映画が先になって原作をまだ読んでいません。
図書館の本は既に貸出し中、予約して順番待ちです。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。