“みてる。ってのは、亡くなるってこと。
満てるだった。なんて美しい。あー。
びっくりでした。”
先日届いた息子からのラインです。
添付されていた新聞の投書は
「伯母が満てた。98歳の天寿を全うした。かわいがってもらった。大好きだった。…」
高知の方言の“満てる”
なんと優しい言葉でしょうか。
あたたかい言葉でしょうか。
方言は表情豊かでおもしろい。
***
“からかう”は
山梨では「手を尽くす。工夫する。修理する。」
これはテレビドラマで知った方言です。
わかりきっていると思っても立ち止まって
言葉を疑ってみましょう、さあ、辞書を開いて…
「辞書は言葉の海を渡る舟」
「多くの人が長く安心して乗れるような舟」
「さびしさに打ちひしがれそうな旅の日々にも、心強い相棒になれるような舟」
「自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟」
そんな辞書を夢みる人たちのドラマ
『舟を編む』(原作:三浦しをん/光文社)は
言葉を慈しむものがたり。
出演者もそれぞれに魅力的で
柴田恭兵さん演じる松本先生、最高です。
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3月24日(日)のエピソードにも心うたれました。
天童くんが松本先生と出会ったのは小学生の頃。お菓子めあてに集会所で映画を観て、両手のない女の人が、ご飯食べたり、字を書いたり、仕事、料理、編み物、楽器までも、全てを足でこなす(きっと中村久子さんですね)、、、少数派だった少年は、マイノリティのそのままでいいんだといたく感銘し、共感した。けれど、最後に流れた主題歌には信じられない歌詞があった。
♪~互いに手を差し伸べ…~
どうせ手があってあたり前と思っている多数派のやつらが、あの人の気持ちなんてなんにも考えないで作ったんだ。悔しくて、座り込んで泣いていた。
「どうしました?」と通りかかった松本先生。
そのわけを聞いて…「辞書をひいてみませんか?」・・・「知らないままでいいんですか?私は知ってるんです。手がなくても、その人はだれかに手を指し伸べることができるんです」・・・「いいんですか?あなたが知らないままで」・・・
ようやく男の子は、松本先生から手渡された辞書で、【手】それから【差しのべる】をひいて「手を差しのべる」意味を探り当てたのでした。
「ナイフだと思った言葉が本当は花束だった。世界ってもうちょっと信じていてもいいのかな」…今や、辞書編纂部の一員となっている天童くんの思い出です。
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新しいことを考えてやろうと、見たり、聞いたり、話したりしているとき、ぱっとヒントを得て新しい発見をする、思わぬものを偶然に発見する能力、セレンディピティ効果で、岸辺さんは紙の辞書の出版アイデアを思いつきました。
【デジタル版】+【紙の辞書】=【デジタル版】+【豪華特典】
「おまけ」でも「付録」でもない、
わくわくネーミングを見つけました。
「言葉は生き物です。生み出しましょう」
と松本先生は言います。