小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

落合美知子さんと《いのちのしずく》

毎年、けなげに咲いてくれる多年草の花たち。
植えかえも、肥料も、水やりも、何の手入れもせずとも
ちゃんと時期を見つけて姿を見せて、
季節の移り変わりをそれとなく知らせてくれます。

蓬や蕗や三つ葉が繁るままの庭に、
勿忘草や十二単があちこちに姿を見せて、
今は、都わすれ、紫蘭苧環、、、
今年はそのサイクルが急ぎ足のような気がします。

ちょっぴり色あせてきた鈴蘭は、
もともとは玄関脇に一株でしたが、
年々広がって、可憐な花が次々に開き、
ついこの間まで清々しい香りを漂わせていました。

この季節、私はお気に入りの一冊の文庫本をそばに置きます。
清楚な鈴蘭が描かれた表紙、
落合美知子さんの『いのちのしずく』(2002.8.9/エイデル研究所)。

《ありがとう おちあいみちこ&せつ 》

いただいた本の後ろに、小さく記された15の文字を見るたびに、
切なく、哀しく、敬虔なきもちになるのです。

子どもたちにお話やよみきかせなどの活動をされている美知子さんに
初めてお目にかかったのは、2002年9月21日の賢治祭。
その翌日のスウさん宅の「特別紅茶のじかん」で、
『いのちのしずく』を知りました。

その小さな本は、
『げんき』に掲載された「おちあいみちこのこぼればなし」30話。

☆先に逝く人は、残された者に
 いのちのしずくを
 ぽとりと落としていく。
 そして
 私たちのいのちに引き継がれていく☆

こんな言葉から始まる美知子さんの五年間。

宮澤賢治の童話や絵本『もりのなか』や『わたしとあそんで』、
『よあけ』、『スイミー』、、、
わらべうたや「こぶとりじい」の昔話、
地球交響曲ガイアシンフォニー」、星野道夫さん、、、
細川律子さんやスウさんも登場します。
「娘とのものがたり」は、23歳で急逝してしまった摂さんとのこと。

 

*…*…*

「お祝いのパーティがあるのよ」と
白いすずらんの花がプリントされた
透き通るように軽やかなドレス姿で嬉しそうだった摂さん。
その2、3日後に、風邪がもとで容体が急変して、
一言も話す間なく、助けるすべもなく、突然の別れ、、、
どんな別れも悲しいけれど、
ましてや、愛する我が子に先立たれた悲しみは如何ばかりでしょう。

「人生は、たった一度っきりだから、
いろんなことを体験したい
いつかおばあさんになって過去をふり返ったとき
後悔だらけの人生には絶対したくない
せっかく授かった命だから
大切にして生きていきたい
生きなくてはいけないのではなく
人間は生かされているのだということを忘れちゃいけないよ」

摂さんが19歳の時の日記に書かれていたこれらのことばたちが
声になって響いてきて、美知子さんの心は少しずつ昇華される。

*…*…*

それから一年経って生まれた
『美しいいのちからものがたりが生まれる』(落合摂&美知子/エイデル研究所)
には、20歳の摂さんのことばがあります。

「たった一つの地球
いくつもの民族
たくさんの国々
その中の一人一人

言葉も違う
肌の色も食べ物も生活だって違う
だけど
みんなみんな一生懸命生きています
幸せを求めて平和を願って
一日一日を大切に過ごしています」

*…*…*

「私は摂によってこの世の生命の循環を
ゆっくり思い巡らせることができました。」
美知子さんの言葉が私の心に静かに沁みこむのです。

摂さんの誕生日に発刊されたという『いのちのしずく』は、
ご縁をいただいて、県内では津幡町立図書館のみ所蔵。
『美しいいのちからものがたりが生まれる』は、
津幡、能美市(辰口、寺井、根上)にあります。
どうぞお近くの図書館で出逢えますように。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。