小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

祝・図書館記念日

今日は図書館記念日
1971年(昭和46年)岐阜市で開催された全国図書館大会において記念日として決議されました。

日本図書館協会」のウェブサイトには、

《昭和25年4月30日、画期的な文化立法である図書館法が公布され、それを契機として日本の図書館活動は新しく生まれ変わりました。サービスとしての公共図書館の機能が明らかにされ、無料原則がうちたてられ、わが国は真の意味での近代的な公共図書館の時代をむかえたのです。日本図書館協会は、今日の図書館発展の基盤となった図書館法公布を記念して、4月30日を「図書館記念日」とすることにいたしました。

戦前の記念日(4月2日 帝国図書館長が天皇に図書館についての御進講をした日)との決別も意図しています。》 とあります。


***    

この「図書館法」の公布について
中井正一氏の書かれた文章があります。

1900年(明治33年)2月14日生まれ
1952年(昭和27年)5月18日逝去

国立国会図書館副館長をつとめられた
中井さんの名文に心がふるえました。

図書館記念日」の意味について
あらためて考えさせられました。


↓(「青空文庫」掲載文より抜粋)


「図書館法の成立」
――燃えひろがる火は点ぜられた――


 この度の図書館法も、このしめやかではあるが、堂々と流れる大河の寂けさに似て、そのもつ政治力は、ゴーゴーの声で通っている幾多の法案よりも、遙かに遙かに巨大な法案なのである。なるほど財的保障はあるかなきかにささやかである。しかし、一本の芽は、決して、ガラスのかけらではない。それは伸びゆく生ける芽である。百年の後には、しんしんと大空を摩す大樹となる、一本の芽である。私達はこころから、この法案の通過に和やかなる拍手を、遠い遠い文化の未来に向って送るものである。
 

 円らな眼、紅い頬の村々の少年と少女の手に、よい本が送られて、たがいにひっつきあって喰い入るように読みあっている姿を、確実な幻として描くことができることは、深い楽しさである。この少年達から、二十年後の世界が生まれ出るのである。私達に想像もつかない二十年後が生まれるのである。二十世紀を完成する世界人が出現するのである。
 
  
 そして、この法案の周囲に、温かい文化を愛するこころを集めなければならない。一隅を照らす光のように、一つの火が他の火に呼びかけるように、次々に燃えひろがる火でなくてはならない。燈台が照らしているようなこころもちでは、それは運動ではない。一つの小さな小さな火が、一つの小さな火に燃えうつり、点々として燃えひろがる火でなくてはならない。それはやがて燃えに燃え、広がりに広がる焔となるのである。これこそは、無限に広がり無限に燃えつづけるものである。それが消えるものであるが故に、燃えていることが美しく、また大切でもあるのである。
 

 図書館法案は、人々が気がつかない程の無限の数字を、新たな歴史を胎んで、今議会を通過したというべきであろう。これを継ぐものは、正しく地を継ぐものとして、重い重い責任を課せられたというべきである。
 
・・・・・・・

底本:「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」てんびん社
   1972(昭和47)年11月20日第1刷発行
   1976(昭和51)年3月20日第2刷発行
初出:「社会教育」
   1950(昭和25)年5月
入力:鈴木厚司
校正:宮元淳一
2005年6月5日作成

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。