小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

文字は…光に

柳田邦男さんが次に訪ねた方は、
第37回(2002年)に最優秀に選ばれた藤野高明さん、82歳。
藤野さんの想像を絶する努力と忍耐、、、に衝撃を受けました。

「継続は力」「文字の獲得は光の獲得でした」

手記にあるこの言葉には、生きる希望と喜びが凝縮されています。

・ ~ ・ ~ ・

7歳のとき、不発弾の爆発によって、両眼の視力と両手を失い、
点字を読むことができないということで盲学校への入学も断られ、
20歳まで不就学の状態だった。

しかし、
唇で点字を読みとり、
更に、左右の前腕を用いて点字を書くまでに至った藤野さんは、
32歳で教員資格をとり、2002年に定年を迎えるまで30年間、
盲学校の教師を勤められた。

* * *

「…重症のハンセン病患者の中には、視力と同時に手指をなくし、
その為に唇や舌先を使って点字を読む人がいることを知るに及びました。
わたしは、そのような壮絶な事実をなかなか信じることが出来ませんでした。
しかし、やがてひょっとすると、このわたしも、
それなら唇で点字が読めるようになるかも知れないと考えるようになりました。…」

とてつもない壁を乗り越えようと
藤野さんがチャレンジするきっかけを与えたのは、
ひとりの看護婦さんが読んでくれたという一冊の本、
いのちの初夜』(北條民雄/作)

・ ~ ・ ~ ・

この番組で、困難な運命を切りひらいていく藤野さんに出会い、
ETVハートネット(4,021,918回視聴 2021/04/16)にも出逢えました。

現在、藤野さんはパソコンを使いこなして、
各地の人たちやメル友のミャンマー人の留学生とメール交換したり、
辞書検索、読書、将棋…と豊かな人生を送っていらっしゃるとか。

そして私は今、相互貸借で県立図書館から借り受けた
『定本 北條民雄全集上卷』(昭和55年10月20日/東京創元社
『定本 北條民雄全集下卷』(昭和55年12月20日/東京創元社
を、涙しながら読んでいます。

(☆北條民雄さんの本、青空文庫にもあります)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。