小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

あ・か・さ・た・な、から始まった!

一ヵ月前にみた《作家 柳田邦男が読む「いのちの手記」》、
人間の生きる力のすばらしさを伝える、心に深く残る番組でした。

「NHK障害福祉賞」はしょう害のある人や、ともに歩んできた人の
体験作文を募集し表彰するもので、35年にわたってその選考委員を務め、        寄せられた手記を読み続けてきた作家の柳田邦男さんが、
過去に受賞された四人の方を訪ねるというものでした。

* * *

まず訪ねた方は、
四肢まひ、言語障害視覚障害の生活、

【『あ・か・さ・た・な』で大学に行く】の手記で、
25歳の時に第43回(2008年)優秀賞を受賞された
天畠 大輔(てんばた だいすけ)さん。

スポーツも勉強も一生懸命、将来の夢は医師になること。
ところが中学3年の時に体調を崩して病院に運ばれ、
医療ミスで心肺停止、それに気づかないまま放置され、
命はとりとめたけれど植物状態になり、
医者からは知能も幼児段階まで低下していると告げられた。
半年間寝たきり状態、周囲の話に反応しない大輔さん、
ある日、病院の看護師が経管栄養を半日入れ忘れ、空腹で、
ただひたすら泣いてばかりいた大輔さんをみかねた母がとっさに
思いついたのは、、、!…母は息子を信じていた。

* * *

「聞こえていたら、五十音の表を頭の中で思い浮かべてね。
今から五十音の表を母さんが言うから自分の言いたい文字にあたったら
何かサインをちょうだい。

あ・か・さ・た・な・は…は行の、は・ひ・ふ・へ…」

私は一時間以上かけて舌をわずかに出すサインで「へ・つ・た」
という三文字に反応しました。
「今のは、もしかして減ったってことなの?」

* * *

おなかが空いたことが伝わった、
初めて、自分の言いたいことが母に伝わった瞬間だった。
生きる動機を与えてくれたコミュニケーション。
それから一時間かけて母に送った言葉…!に
天畠さんのそれまでの想いがずっしり込められています。

高校から養護学校へ、そして大学へ。
七万回以上も、あ・か・さ・た・なを繰り返して
書き上げた卒業論文、、、の手記。

***

卒業後は研究者として生きる道を選んだ天畠さん、

「人を介さずに自分の言葉で喋りたい!」
という尽きることのない欲求の渦中でもがきながら、
今日も私は「あ・か・さ・た・な」で話すのです。

と、ジレンマを抱えながら、
障がい者とコミュニケーション」を主題に研究されているそうです。

☆苦悩や偏見を乗り越え人生を切り開いてきた方たちの言葉は、
【私の生きてきた道50のものがたり】に紹介されています。
手記も全文掲載されています☆

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。