藤平朝雄さんが初めて図書館を訪ねてくださった
その日、B6判の小冊子をいただきました。
『山下すて短歌抄』(平成12年3月4日/心華社)
(昭和61年~平成4年、206首)
平成11年の早春、この世を去られた
すてさんの一周忌を迎えるにあたって、
ご縁のあった藤平さんがまとめられた歌集。
短歌を通じ、全国にすてさんを慕う方たちが
大勢いらっしゃったことを知りました。
藤平さんをお見送りした後、
誰もいない図書館で、紅梅色の表紙を開き、
その一首一首に、在りし日のすてさんを偲びました。
その日の『ひと言・人・こと』(2002.11.24)、
歌集に関して記したのは以下の数行でした。
* * *
「あけぼのの中にて桜貝拾う能登の海鳴りひとりじめして」
「山の木は村の語り部涼とればむかしむかしをはなしかけくる」
・・・届けてくださった『山下すて短歌抄』より。
* * *
それから1年半ばかりたった2004年5月26日のことでした。
件名は「ひと言、人、こと」。
思いがけないメールが静岡県から届きました。
「…私がこのホームページを知ったのは、山下すてさんを
検索したことからでした。市のIT講習を受けたところ、
息子に朝日歌壇にのらなくなって、ずっと気にかかっている人が
いるんだけれど、調べられるかしら?と話しました。
そのとき、輪島市の訃報で亡くなられていたことがわかりました。
よまれている歌からかなりのお年で一人暮らしの方と
思われましたから、もしかしたらとも考えましたが、このように
はっきり知らされることは驚きでした。
週ごとにすてさんの歌を楽しみに人生の先達とも思っておりました。
いつか輪島の図書館に行ってすてさんの歌集を手にしたい、
きっと歌集があるはずと思い込んでいました。
IT講習の後、パソコンを触ることもなかったのですが、
結婚した息子がメールでやり取りしようというので、
メールとインターネットの検索の仕方を覚えました。そして
輪島の図書館でなく津幡の図書館にすてさんの歌集があること、
私と同じような気持ちの人が何人もいることがわかりました。
感激です。そして、家の前の小学校に読み聞かせに行ったり、
図書館の対面朗読室に行くことのある私には、とても身近に
感じられるホームページです。いつかそちらの図書館にも
行ってみたいと思います。センス・オブ・ワンダーすてきですね。」
* * *
印刷して、ファイルして、そっとしまってあった
田代さんの、「はじめまして」メールは、
『山下すて短歌抄』
たった七文字の奇跡のものがたり、
不思議な出会いのはじまりでした。
・・・・・・
☆地産地消文化情報誌『能登』(2015冬 Vol.18)の
特集は藤平さん執筆の
《能登永遠の歌びと『山下すて短歌抄』》
(昭和61年~平成10年、260首)
俳句歴36年、
凛としたすてさんのお着物姿の写真がありました。