NHK日曜美術館「いのちのグリグリを描く」は絵本作家・田島征三さんの日々。
「ぼくのほめられていいところは、へたなまま、じょうずじゃないまま、
あか抜けないまま、60年近くやっていること。我ながらスゴイですよね。」
新型コロナの影響で、予定されていた海外での個展がとりやめになり
思いがけず手に入ったのは絵本作りの時間でした。
少年時代の特別な体験を作品にしたいと、躍動感あふれるタッチで
大胆に、力強く、自在に絵筆を走らせる征三さん!
そうしてできあがったほやほやの絵本『つかまえた』(偕成社)を
あったかいまなざしの80歳の征三さんが、実にあったかい声で読んでくれる 。
(YouTubeでも聴けるのですよ~)
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自分の根っこにあるもの、それは、処分場、ベトナム戦争……
49歳、ゴミ処分場建設に真向から反対した日の出の森トラスト運動の看板には
「木も草も鳥も魚も虫もけものも、みんな一所懸命生きている」とある。
体調を崩し、日の出町から伊豆に移り住んだ。
散歩が日課となり、散歩道に落ちていた木の実を拾い集めるのが楽しみになる。
そしてできあがったのは、『ガオ』(福音館)
三年がかりで取り組んだ木の実のコラージュ絵本。
ある日 やまいぬは おおごえで ほえたくなった
ガオ <<<<
すると、「元気」がバラバラになって、、、
木の実が弾け飛んで、自由自在に変化する
不思議な、パワフルな、いのちの世界です。
この写真を担当したのは、酒井敦(さかい あつし)さん。
ひろい集めた木の実やセミの抜け殻、カタツムリの殻などを使った作品の撮影に
かれこれ十年立ち会っているという酒井さん、実は、津幡町出身の写真家です。
2000年、2002年に開催した「新春 出会いの夕べ」のゲストとして
田島さんの生き方、木の実の絵本の制作についても話してくださいました。
ゴミを燃やし、猛毒の灰にして、森に埋め立てるのは犯罪行為。30年以上も
天に向かって幹を伸ばし枝を広げてきた美しい樹々がパワーショベルに
はさまれてねじきられてぐちゃぐちゃにされることが許せないと
ショベルカーのハサミにぶらさがって、命がけで闘った征三さんのこと、木の実をひたすら並べ続ける征三さんの姿。。。
いただいた「こどものとも548号『ガオ』インタビュー(2001年)」にあった
征三さんのことば、今もだいじにしています。
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木の実を拾うって、本来、愉しいことなんじゃないかなぁ。
ものをつくるというのも、本来楽しいことなんだと思う。この作品づくりは、
本当に楽しかった。無心に並べているのも楽しかったけれども、並べてみて、
うまくいかなかったりして、う~んどうしようか、やり直そうと思った時には
もう並べていた木の実はないので、あと一年待とうなんてことになってね。
自然を相手にしていると思うようにいかない。
たくさん実がなる年があると思えば、あまり実がならない年もある。大きい実が
なったり、なる時期が違ったりする。大きな地球の時間が流れていて、そこに
僕もいる。散歩したり、海を眺めたり、ご飯を食べたり、眠ったりしながら、
作品も自然にできてくる。地べたに生えている植物と相談し、木の実の声を聞き
ながらね。
僕の絵本を見た子どもたちが、何かを感じて、自然のなかにとびこんでくれたら
いいと思う。実際に体を動かしてね。子どもたちはきっといいものを感じ取る
感覚、いいものを生み出す力をもっていると思うから。
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こんな征三さんの絵本『ふきまんぶく』や『とべバッタ』、『ちからたろう』、
もちろん『ガオ』、子どもたちは大好きなのです。