小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

10年たっても

昨日、友人から届いたメール。
…作者の六田知弘さんは「写されたモノたち自身が語る声に耳を傾けてほしい」と言っておられます。泥にまみれた小さな花束の写真もありました。誰から誰へのプレゼントだったのでしょうか。…

ああ、そうだった、昨日までだった、、、
3月1日から開催されていた写真展「時のイコン2021」。
波にのまれ、打ち捨てられたモノたち、が目に浮かぶ。

… ~ … ~ … ~ … ~
震災から10年、今も2527人が行方不明のまま。
遺された人たちはどうしているのだろうか。

クローズアップ現代「不明の娘捜して海に潜る父」。
ひとり娘をずっと待ち続けているご家族がいた。
この10年間、毎朝、娘さんのお墓を訪れ、自分の顔を毎日あらうのと一緒だと、刻まれた「絵美」という名前をきれいに拭う。でも、手は合わせない。お墓の中には何も入っていないから、だと。

震災後、海を見るのもいやだった父親は、58歳でダイビングの資格を取得。信頼する友人と一緒に500回近くも海に潜り続けている。背中を押してくれたのはその友人。友人は瓦礫の中から見つかった携帯に届いた15:21の妻【帰りたい】という最後の言葉を胸に、手がかりを探して潜る。誰かのナンバープレート、車検証、、、そして職場にあった湯飲み茶わん。二人で力を合わせて海の底に沈んでいたモノたちを拾い集めている。

母親は、2年過ぎた頃から、絵美さんとの思い出をノートに綴るようになった。
絵美さんのしぐさや口ぐせ、表情、、、思い浮かんだことを、毎日ひとつずつ書き残して、9冊目になる。街も人もかわって、、、震災、ほんとにあったのかな。元気でないのは私たちだけ。以前のノートを見ながら、、、忘れていたこともあって、ハッとする。記憶も薄れてきたんだね。こんなに思っているんだけど、悲しくなるね、ひとつも思い浮ばないときもあるから。

あまり前に進まないようにしているの。前に進むと思い出が遠くなっちゃうから。
12月10日、ケーキを囲んで絵美さんの36回目の誕生日。
12月10日と3月11日、一日どう過ごしていいのか分からないのだという。

「10年たつと楽になるのかなって思うけれど逆だよね。ますます娘に対する思いは強くなってくる。」

癒えることのないご家族の悲しみの深さ、かなしくてしようがない。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。