小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

21年前の絵葉書

孫娘のフォトマグネット、《LINTU PIENI》の 歌詞、
アメリオオバンの新聞切り抜き、アストラさんの詩、
冷凍大判焼きの解凍法、郵便局からのサービス変更のお知らせ、
甘酒の作り方レシピ、町内入浴施設の無料券、、、
冷蔵庫の扉は小さなものたちであふれている。
そろそろ整理しなくちゃね~~~


お気に入りの絵葉書は谷内正遠さんの版画。
お地蔵さんとネコの《のんびり ゆっくり》が、
ドアを開閉するたびに目に入ってくる。

「のんびり ゆっくり するのも
たまには なかなか よろしい  masato」

はぁい、今、私はのんびりゆっくりですよ~と
つぶやきながら、ふと、表書きを見て息をのんだ。

消印は【12.7.28.12-18】金沢中央郵便局
宛先の下半分に書かれた、小さなぽつぽつ文字。
差出人は図書館の利用者だった和代さんだった。 
目を凝らさないと見えないほどの小さな句点...

・・・・・
「○○さま お手紙ありがとうございました.
俊君がいっしょうけんめい大事そうに届けてくれて、
嬉しそうでした. 私もとっても嬉しかったです.
病院に来て治療をしてから毎日熱が出て
点滴をしています. でも病院に入ったら
ホットしました. 気がはっていたのですね.
子供たちには 夏休みの間 すこし
不便をしてもらい. ガンバッテもらおう~ と.
私は病院でぐっすりとねむれるようになりました.」

・・・・・
そう、実は、
先日の瀬戸内寂聴さん逝去の報道に、
私は和代さんのことが心から離れないままでした。

「寂聴さんのあおぞら説法を聴きに行きたくて、
無理かなと思うけど、、、一緒に行ってもらえませんか」

図書館の廊下で呼びとめられた日のこと。
彼女の願いをかなえてあげられたらよかった…。
寂聴さんの名を聞くたび、私の心はちくちく痛いのです。

2000年夏の絵葉書は、
この時が来るのをじっと待っていた、
としか思えないほどの偶然さでふっと姿をみせた。
いつまでものんびりしている私を急かすように。

* * *

(2001.5.18)『ひと言・人・こと』/図書館で出逢ったKさんを想う

図書館ではさまざまな出会いと、また、時には別れもあります。 
読書が大好き、図書館大好き、やわらかな春の陽射しのような、
桜の花びらのような…Kさん…43歳…をそっと心の中で見送った日。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。