小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

小さな図書館があった…

蔵書12,000冊、小さな図書館が誕生したのは1996年夏。
なにもかも、ひとつひとつ手探りの9年間でした。

「この7月10日で、オープン一周年を迎えようとして
おります。これまでに約87,000冊、町民一人あたり
約2.7冊の本が貸し出されたことになります。
 4月から石川県図書館ネットワークが開始、県立図書館
からの協力車も毎週来るようになり、より早く皆さまの
ご要望にお応えできるようになりました。
 身近に図書館のある暮らしの豊かさを、多くの方に
知っていただき、みんなで”わたしたちの図書館”を
育てていきたいと願っております。」

これは、平成9年7月3日発行の図書館だより№1の巻頭文。
前年度の活動、所蔵図書内訳、年齢別利用人数、
図書館の中の案内図、レファレンスやコピーサービス、
人気ベスト本の紹介、いただいたお便り紹介、
毎月の予定、年間行事予定、ボランティアさんや読書会
の募集などが、切ったり貼ったり、ワープロ時代の図書館報でした。

町のみなさんと手を携え、繋ぎ合いながら、
図書館づくりは、街づくりなのです、
と呼びかけながらの日々。
そんな図書館の歩みを、
お二人の方がまとめられた温かい文章があります。

* * *
水野スウさんが2004年8月に発行した、紅茶三冊目の、
『きもちは、言葉をさがしている~二〇年目の紅茶の時間』。

紅茶の仲間のこと、ご家族、万依さんやまあさんのこと、、、
やさしいきもちが、静かに伝わってくる素敵な本の中に
センス・オブ・ワンダーの図書館》のことも
丁寧に、心をこめて、11ページにもわたって紹介して
くださっています。ほんとうにわかりやすく。

 ~・~・~・~・~ 
「私の住んでいる津幡町にある町立図書館は、
とても小さいけれどとびきりユニークで不思議な、
ひと呼んで「センス・オブ・ワンダー」の図書館。
 そのわけを今からお話ししましょうね。…」

(中略)
 
「…そのオープンな気持ちや姿勢で、図書館のドアを
開ける人たちを迎える、出逢う、語り合う、その人の
よさや力を引き出す。さらには図書館に来たことのない
遠方の人たちとも、メールや手紙や電話でつながってゆく。
この図書館は、だからオープン・ハウスならぬ
オープン・ライブラリーであり、同時に
コミュニケーション・ライブラリーでもあるんだ、と
あらためて感じました…」


* * *
座主さんは、北婦研の『かいほう』第67号(2004.4)の
コラム《木もれび》に、
「私の町の小さな図書館」と題して。

 ~・~・~・~・~ 
「もともと道は有るものではない。
歩けば希望という道になる」
数年前に頂いた梶井先生の賀状の一節が
折々思い出されて来ます。

 私の住む津幡町には県下一と誇りたいと思っている
図書館があります。閲覧室らしきものも無く処々に
おかれた腰掛けがその役目を果たしているような
小さな小さな図書館ですが、温かな雰囲気に包まれた
図書館です。他県の人達からも「小さな町の不思議な図書館」
と呼ばれ羨望されているのです。
 
 館長さんは常々「図書館とは本と出会うだけでなく
人と人が出会う場でもある」とその為の手だてを種々工夫し、
また利用者の声にも耳を傾けるなどして図書館へ一歩
踏み込んだら誰もが魅了されてしまいそうな運営をされていて、
まさに梶井先生の賀状の一節がそのまま実践されているような
感じを受けます。

 開館間もない頃、梶井先生に是非見て頂きたいと御案内し
記念に写真を…とお願いしたのも嬉しく懐かしい思い出です。

 開館一周年を記念して企画された「出会いの夕べ」
~著者とのつどい~は、この8年余で37回を数え、
第4回は、梶井先生にお願いして『女は三度の老いをみる』を
通してのお話をお聴きしました。参加された皆さんが熱心に
耳を傾けておられた様子は今も忘れられません。

 また、毎年利用者に呼びかけて募集している
『手づくり図書館かるた』。それで新年のカルタ会を開き
皆で楽しんでいます。今回で8セットになりました。

「みょうな図書館 菊や 星や 泥だんご
 人あり 詩あり みんなの図書館」
これは、今年のカルタ百一枚の中の作品です。

 ホームページを開けば日々のさまざまな情報が克明に
記入され、まさに『センス・オブ・ワンダー』の図書館です。

 一年後には新しい大きな図書館が出来、
この小さな図書館とはお別れです。
嬉しい反面小さな図書館の大きな魅力も捨て難い…
と思いつつ図書館へ立ち寄っています。 (座主 祝)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。