2000年の早春、獅子吼高原の麓で夫とランチに入った古民家風のちいさなお店
「泰夢」(タイム)…そこが出会いの始まりでした。
壁には季節のお品書きや迫力満点の大きなバッタの絵など、、、
お料理を待つ間、魅力あるモダンで個性的な筆遣いをひとつずつ眺めながら、
奥の壁にかかっている絵画の前に立った時でした。
50㎝×65㎝の緋色の木製額入り、描かれていたのは野鳥たち
その周りを囲むようにして、大小さまざまな流れるような文字
なんとも不思議な印象の作品に目を奪われてしまいました。
細やかな筆を目で追いながら、私は次第にドキドキしてきたのでした。
あ、この言葉は。。。?もしかして、、、
「子どもといっしょに自然を探検するということは、まわりにあるすべての
ものに対するあなた自身の感受性にみがきをかけるということです。」
「それは、しばらくつかっていなかった感覚の回路をひらくこと、つまり、
あなたの目、耳、鼻、指先のつかいかたをもう一度学び直すことなのです。」
そしてとうとう、作品の中に《The Sense Of Wonderより》を発見した時
嬉しさのあまり、思わず声をあげたほどでした。
描いたのは、本店の川魚・山菜料理「和田屋」の若女将、喜久子さん。
『センス・オブ・ワンダー』を題材にされるなんて、なんと素敵な方でしょう。
2001年『センス・オブ・ワンダー』上映会を決めた時、
私の脳裏にすぐに浮かんだのは、あの作品のこと。
再び「泰夢」を訪ね、この作品をぜひ多くの方に紹介したいと強く思ったのです。
その足で、図々しくも「和田屋」さんへお願いに伺ったのでした。
ステキなその作品を、なんとか上映会までお借りすることはできないでしょうかと。
見ず知らずの者の唐突な願いに、お家の方もさぞ驚かれたにちがいありません。
が、後日、了解してくださった旨、若女将さんからお電話をいただいたのでした。
6月4日の休館日、なんにも知らない座主さんをドライブに誘って出かけたこと、
「泰夢」で食事しながら、そのいきさつを知って座主さんが感嘆したこと、
しかも、思いがけずその作品を譲ってくださるとのお申し出に共に感激したこと。
6月7日には、喜久子さんからそれはそれは美しいお手紙をいただいたこと。
この作品にまつわる明るいエピソードは、上映会の弾みとなりました。
図書館のお宝拝見!と、鶴来町からはるばる図書館にやって来た方もいました。
(小さくて見えづらいのですが『ひと言・人・こと』HPの「年賀状」に写真あり)
今は新図書館に受け継がれ、入り口を入ってすぐ右側の壁面に掲げられています。
が、この作品との出逢いのものがたりを知っている人は数少ないことでしょう。
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【お・く・り・も・の(鶴来町~津幡町)】『図書館だより2001夏 №12』より
図書館に入ってすぐ左の窓辺、緋色の素敵な額縁入りの作品が掲げてあるのに
気付かれたでしょうか。鶴来町(つるぎ)のお住いの和田喜久子さんが描かれた
世界…雀(スズメ)翡翠(カワセミ)、鷽(ウソ)、黄鶺鴒(キセキレイ)
…小鳥たちの豊かな表情、しぐさ、そこから感じる生命の躍動
・・・いったい、この絵を描いたのはどんな方?・・・
この作品に初めて出合ったのは一年余り前の早春。鶴来町で偶然立ち寄った
小さなお店に飾られていました。文字と絵が醸し出す不思議なハーモニー!
しかも、それが「センス・オブ・ワンダー』からの一節だと知った時の感動と
胸の高鳴りを今も忘れることができません。
和田さまのご厚意により、今回の5周年記念上映を機に、津幡町の図書館に譲って
いただくことができました。深い緑色の表紙に惹かれ、鶴来町の豊かな自然に
思いを重ねて制作されたという和田さまからの『センス・オブ・ワンダー』
お心こもったお手紙と共に出会っていただきたいと願います。
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【 お手紙 】
庭の山あじさいの花が雨にぬれてきれいです。
昨日はおいしいお菓子と共に津幡の図書館様のご活躍の
レポート等々お知らせいただき誠にありがとうございました。
”なんとも不思議なご縁で”としか言いようのないような〇〇さまとの
今回の出合いではございましたが、私のような者が描いた絵が喜んで
いただけるのでございましたらこれも良縁と津幡町の方へお嫁に行く私の絵を
送り出して皆様に喜んでいただけるよう励ましてやりたいと思っております。
どうぞ娘をよろしくお願い申し上げますとともにこの度の
「センス・オブ・ワンダー」の上映会のご成功心よりお祈り申し上げております。
平成十三年水無月 和田きくこ
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コロナで閉店余儀なくされたお店はどうなっているだろうか。。。
「和田屋」さんのブログ《女将つれづれ》には、
四季折々のおもてなしが綴られている。
6月の「熊と一緒にフランク・シナトラを」は可笑しい。
楚々と、はかなげに見える女将さんは、なかなか勇敢で頼もしいのだった。