小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

線状降水帯の夜のこと

7月12日、それは娘たちとの最後の夜でした。
4人でラミィキューブを楽しんでいた時、【大雨、洪水】の警報が一斉に鳴り響きました。夫は大丈夫だと言いますし、私もまさかと思っていました。娘たちは雷雨におびえながら、時々、玄関先に出ては心配しています。


夜の10時をまわり、ほとんどのお家が暗くなっている時刻です。今から思えば…ちょうど娘たちがいたこと、(昨夏、息子がプレゼントしてくれた)ラミィキューブをしながら警報を気にしていたこと、すぐ目の前に用水が見えること…そんなひとつひとつが、最小限の被害につながったように思えます。

家のすぐ前を流れる用水は幅3メートル近く。鴨のつがいが子育て、源氏ホタルも姿を現し、涼風に心癒される流れです。冬は近くの人たちの雪捨て場ともなり、こちらに居を構えて40年以上になりますが、用水が氾濫することは一度もありませんでした。

みるみる水かさが増していく様子は尋常ではありませんでした。万が一のことを考え、500メートルほど先の安全なところへ私たちの車を移動しました。激しい雷雨の中をずぶ濡れになって駆け戻ると、濁流は渦巻いてコンクリートの橋を乗り越えそうです。夫は防犯委員さんと一緒に近所に知らせました。後で聞いた話ですが、寝入っていて起きなかったお隣さんも警報は聞いたけれど、「単なる警報」と思って全く気に留めなかったそうです。

車を避難させてほっとしたのも束の間でした。一面激流となって、橋はもう見えません。玄関の中にとっさの防御物で塞いでもなんの効き目もありません。ドアのすき間から水はどんどん浸入してきます。無駄なことだと夫に散々言われながら、娘たちはバケツリレーで排水を始めました。無駄かもしれないと思いながら、私も加わりました。ガスボンベが倒れて浮いているので、夫はガス栓を止めに行きました。暗闇の中、中庭も裏庭もどっぷり水に浸かって、まるで大きな池の中に家が浮かんでいるような、悪い夢でも見ているような光景でした。

幸運にも雨が弱まって、リレーは終わりました。

***

翌日は何ごともなかったかのようにすっきり晴れました。水が引いた後には至るところに泥がこびりつき、庭や畑のあちこちに流れ着いた見慣れないモノたち散在していました。もしや、とユーティリティの床下収納庫を開けると…予想通りの状況でした。

今日の朝刊によると、12日夜、津幡では83ミリを記録、観測史上最大を更新したとか。
今でも信じられないできごとでした。
福岡、秋田でも発生した線状降水帯。
その脅威をひしひしと実感しています。

 

体験することは意味がある、とつくづく思います。

床下浸水から床上浸水を、土砂崩れを、、、3.11災害、戦争。。。
うまく表現できませんが、
数字、活字の後ろに横たわる事実を、更に切実なものに感じます。

川遊びの事故のニュースにも胸が痛みます。

 

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。