小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

ある記者さんとの出会い~熊田千佳慕の世界

実は、27日のブログの「ある記者さんとの出会い」には、
嬉しい続きがあるのです。

* * *

大阪の詩人・里みちこさんの「出会いの夕べ」から一年。
ふと目にとまった「笑ってがん吹っ飛ばせ」の記事は、
北村記者取材のハートフルな記事でした。

4月14日、その懐かしいお名前に思いきってファックスすると、

折り返し、元気いっぱいのお電話があって旧交を温めました。

そして速達で、

「アートな人 生物画家 熊田千佳慕さん(88)」(3.21)
…還暦過ぎて始めた『昆虫記』、100種の絵めざす…

明治生まれの、米寿の、粋なハマッコ、の《クマチカ》さんとの

ステキな出会いの夕刊記事コピー、
展覧会の立派な記念図録が送られてきたのです。

なんでも、「去年開催した展覧会(朝日新聞社主催)の
美しい記念図録を抽選で100人の方に進呈」と呼びかけたら、
「こんな人がいたなんて!」と、2000人近い応募があったとか。
県内では津幡町立図書館のみ所蔵の貴重な図録です。

* * *

2020年5月19日のブログで紹介した図書館応援団長の
座主祝(ざす・いわい)さんは、大正13年生まれ。
数年前から施設に入所されていて、
3年ほど前からは、私のこともお忘れになっています。
お顔が見たくても、コロナ感染防止で、
お目にかかることはかないませんが、
毎日のように事務室を覗いてくださった姿を思い出します。

『館報つばた』平成12年(2000)6月号の小欄「まちかど」に、
この嬉しい贈りものについて、さっそく記してくださいました。

* * *

 「千佳慕」千人の佳人に慕われるという雅号を
もつ画家、熊田五郎著の絵本を目にする機会に恵まれた。
『花と虫を愛して…熊田千佳慕の世界展』という画集で、
日本のファーブルと言われている画家だそうだが
初めて聞く名前だ。

 扉には、黒柳徹子の「バラの花びら一枚描くのに
たっぷり一ヵ月かけて描く。細い毛筆の筆の先の毛、
三本だけで描く。私にはその毛が細くて三本と言われても
見えなかった。千佳慕さんは、八十八歳!…」の文。

 枯葉を描くのも千佳慕流。
枯葉にも初めは青々とした青春もあったろうに、
いきなり枯葉にしちゃっては可哀そうと
先ず緑の生き生きした葉っぱにあの細い葉脈も
みんな描き、その上から花色やいろんな色で枯葉にさせ、
若い葉っぱは、年をとっていくのだとも。

 紙の上で年をとる葉っぱという考えに心惹かれる。
そんな文を読んだ後に見た絵本の花や虫。
細い繊毛の一本一本に込められた千佳慕の気持ちが
伝わってくるようで見飽きない。何物にもある命、
また時の流れという歴史があることなど物の見方の
一面をも教えられた絵本だ。

 ふと手にした一冊から千佳慕という画家の花や虫への
心優しい接し方を知る。丁寧に描かれた葉脈、つい
触れてみたくなるような鳥獣の柔らかそうな胸毛等が
何時までも目に残り、暫くの間豊かで楽しい気分を
味わった。…絵本『熊田千佳慕の世界』は、
ご縁があって町の図書館に届けられたもの…。(ざす)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。