11月2日、福音館書店元社長の松居直さんが96歳で亡くなられた。戦後の児童文学の発展に貢献、70年前はほとんど見られなかったという創作の名作絵本を世に送り出し、1956年4月に月刊「こどものとも」を創刊、日本の絵本出版に決定的な影響を与えた方。今一時半、県立図書館では松居さんを偲び、講演会が始まっている。
講演会「松居直から受け継いだもの~絵本づくりの現場から~」は、〈松居直コレクションプロジェクト〉発足10周年、福音館書店創立70周年のspecial企画。定員140名、ぜひとも参加したかったけれど、、、残念、時すでに遅し。県立図書館の「だんだん広場」、参加されている人たちの光景が目に浮かぶ。
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2002年1月~2月、NHK教育TV〈人間講座〉で松居直さんの《絵本のよろこび》が放映された。(各回で絵本や本、作家の紹介、解説が興味深く語られていた)
第1回 絵本とは何か/『赤ちゃんのはなし』『センス・オブ・ワンダー』『いないいないばあ』『絵本はともだち』
第2回 わたしの絵本開眼/『コドモノクニ』『ちいさいおうち』『ちいさいケーブルカーのメーベル』『いたずらきかんしゃちゅう』『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』『名馬キャリコ』『はたらきものおじょせつしゃけいてぃー』『せいめいのれきし』『大草原の小さな家』
第3回 ”声に出して読む”ということ/『おおきなかぶ』『ピーターラビットの絵本』『ぐりとぐら』『三びきのやぎのがらがらどん』
第4回 こどもの眼、大人の眼/『もりのなか』『わたしとあそんで』『ジルベルトとかぜ』『ライオンと魔女』『まどのそとのまたむこう』『やんメイズとりゅう』『またもりへ』
第5回 絵の力、文章の力/『あおくんときいろちゃん』『ちいさなうさこちゃん』『スイミー』『フレデリック』
第6回 昔話の再発見/『日本民話選』『龍の子太郎』『かにむかし』『八郎』『ごろはちだいみょうじん』『さるかにばなし』『ももたろう』
第7回 絵本づくりの思想/「コドモノクニ」「こどものとも」『とらっくとらっくとらっく』『100まんびきのねこ』『北越雪譜』
第8回 絵本のこれから/『トケビにかったバウイ』『山になった巨人』『くりひろい』『しんせつなともだち』『かさじぞう』『スーホのしろいうま』
子どもたちにほんとうに美しいものを見せたい、心から楽しい、おもしろいと感じてくれる絵本を手渡したいと、作家、画家、編集者が精魂込めて仕事をした。戦争に生き残った者の務めとして、精一杯に生きることが平和につながると信じていた。これからの多文化社会の中で、子どもたちが希望をもって生きられる力を身につけられるよう、大人は細心の気配りがしなければならない・・・松居さんの理念が語り尽くされた番組だった。
その第1回に『センス・オブ・ワンダー』が登場したことも印象的だった。
「絹漉しの雨」という言葉もこころに残った。
(小さな図書館の関連記事があります)
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松居さんから年賀状をいただいたんだった!
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長女が誕生したお祝いに、友人が一年間分の福音館書店の『母の友』をプレゼントしてくれた。若い母親にとって羅針盤的雑誌だった。子どもの成長とともに、月刊の『こどものとも』『かがくのとも』も講読するようになった。その中から、3人の子どもたちがそれぞれに読んでほしい絵本(ひとり何冊だったかな?)を枕元に、布団の中で顔を寄せ合って聴くのが就寝前の日課だった。私の方がうとうとして本を落っことしてしまうこともあった…忘れていた昔が懐かしく蘇る。そういえばあの『母の友』たちは、50年以上も押し入れの奥で眠っている。
図書館の仕事に関わるようになってから、
金沢のメイン交差点に面した福音館書店へよく出かけた。
小さなビルの細い階段を上ってドアを押すと、明るい空間が開ける。
ささやかなフロアに、たくさんの絵本や書籍が品よく並べられていた。
人や車が行き交う街路の騒音とは異質の
温かくゆったりした時間がいつも流れていた。
夜に開かれた講演会も上質だった。
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松居さんの追悼展ともなる「はじめに松居直がいた」は25日まで。
なんとかチャンスを見つけたい。