小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

よしのり先生の最後の授業

この間の日曜日のことです。
早朝の町のクリーンキャンペーンに参加して草刈り、
それから食事、洗濯、掃除、、、
一通りのことを済ませ、ちょっと一服しなくちゃと
テレビのスイッチを入れると…


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「雨にも負けず」  宮澤賢治

雨にも負けず
風にも負けず

そういうものに わたしはなりたい

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教室の黒板に貼られていた大きな紙に
ひらがな表記の「雨ニモマケズ」!

急いで録画~~!
偶然見たEテレ「ハートネット」は、
全盲の中学教師、新井淑則さんの最後の授業。
「デクノボー魂」の最後の5分間でした。

* * *

黒板を背にして、クラスのみんなに
よしのり先生が問いかけます。

「私ひとりで何ができるの?でしょう?」

「そう、多くの人に出会っから、
その人たちに助けられたから、今があるんだと思います」

「37年間教職を続けてきて
お前たちが一番なことが二つあります。
どっちを聞きたいですか、
悪い方の一番ですか?良い方の一番ですか?」

悪い方は簡単、、、
37年間教えてきて一番成績が悪いと笑わせる。
では、良い方の一番は?

「37年間教えてきた中で、一番お前たちは
温かい。優しい。心が」

手が不自由だからと、
学校でいじめを受けるんじゃないかと
心配して相談に来たお母さんに、
障がいゆえに差別やいじめを受けたら、
私のいる存在価値が全くないことになる。
教職をかけても守ると二人に約束したという。

「でも、その心配は無駄だった。
差別どころか自然体で受け入れちゃうお前たち」

「なんてハートのいいやつなんだろう。
お前たちと一緒に卒業したいなと思ったのは
一年生のあの時からです」


先生からの太鼓判!
なんて素敵な、Bigな、花まるスタンプでしょう。

そして、
生徒たちからも贈り物。
それは、小さな再生レコーダー。
令和三年度卒業生71人、一人ひとりの
熱いメッセージが入っていました。

全盲の自分にできることを…と工夫しながら
生徒たちとどんなに誠実に向き合ってきたか、
心を通わせてきたか、並列の関係を築いたか、
彼らの言葉を聴きながら、私は目頭が熱くなって、
すぐさま図書館へ直行したのです。

* * *

待っていたのは一冊の児童書。
『光を失って心が見えた 全盲先生のメッセージ』
(新井淑則/2015.11/金の星社

28歳のとき、右目に網膜剥離を発症。
34歳で左目も失明
37歳で養護学校に復職
46歳で公立中学校教師に復帰
・・・・・
結婚式、家族や友人、授業風景、盲導犬と歩む写真や
自作の詩、、、苦悩の日々を乗り越えてきた
よしのり先生に会えました。

賢治さんの『オツベルと象』を朗読したよしのり先生。
日本国憲法の三大原則、
基本的人権の尊重・国民主権・平和主義」の中で
最も大切なものは?!と解き明かすよしのり先生。

音声パソコンを使って自ら執筆された
感動のノンフィクションでした。


* * *

今日の中日新聞特報記事は盲導犬について。
年々、盲導犬が減少しているそうです。
いくつかの要因があるらしいのですが、
心配なのは、盲導犬の理解が進まなくなること。

よしのり先生の傍らには
いつも必ず、パートナーの盲導犬の姿がありました。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。