小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

「越中八尾 おわら風の盆」に魅せられて

「おわら」踊りには、三通りあるそうで

・豊年踊り
・男踊り
・女踊り(四季の踊り)

 

私が「おわら」ファンになったのは、四十年ほど前。
とある親睦会で、編み笠を目深にかぶり
当時の北陸銀行支店長のⅯさんがさっそうと登場。
きりりと美しい、「男踊り」のかっこよさに、
すっかり魅せられたのがきっかけです。

~~いつか「風の盆」を訪ねたい~~


ひそかな願いがようやくかなったのは五年前。
臨時に設けられた大駐車場から
ピストン輸送のバスに乗り換えて
八尾の街に一歩入ると、もうあちこちから、
三味線、胡弓の哀調の音色が響いてきます。
唄も味わい深い、歌詞もいい、、、

蛍とたわむれる女踊り、田畑を耕す男踊り。

半信半疑だった夫も情緒あふれる「風の盆」に魅了され、
その翌年は友人たちをも誘って出かけたのですが
残念ながら、その後はコロナで中止でした。

***

歌詞は「七、七、七、五」。
古くは江戸時代からのもあり、
代表的な《八尾四季》は
八尾の春夏秋冬をうたったもの。

「揺らぐ吊り橋
手に手を取りて
渡る井田川
オワラ 春の風

富山あたりか
あのともしびは
飛んでいきたや
オワラ 灯とり虫

・・・・・・」(作詞:小杉放庵)

***

昭和30年頃までは養蚕で栄えた町。
女たちの仕事の中から生まれた糸繰り唄との説もあり

最後の五文字の前に「オワラ」と入れて
ふるさとの自然や暮らし、さまざまな想いを詠んで
今では5000首を超えるとか。


「雪の立山
遠くに霞む
八尾坂道
オワラ 春の水」
 

「流すおわらに
糸繰る母を
思い出させる
オワラ 盆の月」


「山の畠で
二人でまいた
そばも花咲く
オワラ 風の盆」


「唄の街だよ
八尾の町は
唄で糸とる
オワラ 桑も摘む」

 

(昭和7年には歌い継がれてきた歌詞をまとめた『おわら万葉集』が編まれました)

***

毎年、9月1日~3日に実施される「おわら風の盆

《おわらに欠かせない役割を担っているのが唄と楽器で奏でる「地方」です。地方は「唄い手」「囃子」「三味線」「太鼓」「胡弓」をいいます。三味線が出を弾き、胡弓が追います。太鼓が軽く叩かれ調子を上げると囃子が唄を誘います。唄は甲高い声で唄い出し息継ぎなしに詞の小節をうねらせ、唄は楽器に応え、楽器は唄に応えます。》(越中八尾観光協会HPより)

楽器のなかでも、おわらに最も欠かせない三味線。
その三味線の第一人者、町にとって宝もの、
とまで慕われた杉崎茂信さんが
この7月に亡くなられたと知りました。


NHK『新日本風土記』には
その杉崎さん(84歳)の映像がありました。
9年前の「風の盆」。

―この「おわら」ちゃあ、ありがたいもんでねぇ
わしらの息しとるのとやや近い
三味線ひく回数と心臓の回数はやや似とる
だから歩くひともつかれん
踊るひとも朝までやっとるの

…いいところに生まれたもんだね
ここまで生きてきて…
まるで「おわら」のおかげだ―

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。