小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

『福田村事件』(辻野弥生)を読んで

『福田村事件ー関東大震災・知られざる悲劇』
(辻野弥生//五月書房新社/2023.7.10)

中日新聞(8月27日)の永田浩三さんの書評を読んで強く関心をもった本。
羽咋市立図書館からの相互貸借で読むことができました。
各図書館にぜひ置いてほしい本だと思いました。
(県内は、金沢、加賀、野々市羽咋の4館のみ。全館貸出し中)

“事件が持つ歴史的、社会的重要性から言って、絶版には惜しむべきものがある。ぜひ増補改訂版を”と手を挙げた編集者により、旧版を全面的に加筆し、新版として生まれた本です。

旧版は、2019年7月、「千葉の良心が、いや、日本の良心が静かに消えた」(佐野真一さん)と惜しまれつつ約半世紀の歴史に幕を下ろした崙書房出版(流山市)。題材を地域に根ざした新書版「ふるさと文庫」の一冊として誕生。売れる売れないより、地域に必要な本としての矜持を保ち、送り出した郷土の本は約千冊。結果として多くの新人郷土作家を輩出したそうな。

利根川下流、福田村(現在の野田市)で起きた事件を、辻野さんは、地道に丁寧に検証し考察する。

《はじめに》で「地元では、事件のおぞましさにおののいてか、長い間口を閉ざしてきた過去がある。いまさら百年前の事件をあばきたて、加害者を糾弾しようというのではないが、繰り返さないためにも、あったことをなかったことにはできない」と書いていらっしゃる。

森達也監督の映画のよりどころとなったのがこの本でした。

「渾身の一冊である。…映画はフィクションだ。エンタメの要素も強い。だから実在してない人もたくさん登場する。物語を紡ぎながら事実を補強する。でも、それは史実とは微妙に違う。だからこそ、この本の位置は重要だ…忘れてはいけない。忘れたらまた同じことを繰りかえす。過去に会った戦争や虐殺よりも恐ろしいことがひとつだけある。戦争や虐殺を忘却することだ」森監督から寄せられた一文もありました。

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スウさんのブログ「紅茶なきもち」(2023年10月23日)には
映画「福田村事件」のことについて記されています。
友人が予約してくれたおかげで私も観ることができました。
サイン入りパンフ、ご希望の方にお貸ししましょう。

映画「福田村事件」の金沢シネモンドでの上映は
今日が最終日です。(16:40~)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。