NHK総合『デフ・ヴォイス』(後編)
Eテレ『トゥー・キッズ・ア・デイ』
土曜夜、みたいと思っていた番組が
あいにく同じ時間に重なってしまった。
一瞬迷ったけれど、
手話はくり返し見たいので
総合を録画することにして
教育コンテンツの国際コンクール
第50回グランプリ日本賞の作品を
みることにした。
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【Two Kids a Day】のタイトルは
毎年700人
つまり・・・毎晩2人
石を投げたという罪で
サッカーをしているところを
連れ去られ、一人ずつ
罵られ、叩かれ、非情な取り調べ調べを受ける
12歳から14歳の子どもたち
家族から引き裂かれ
通算2年、3年、4年…の長期にわたって
刑務所に拘留され、打ちのめされ
心に深い傷を負って出所する
なぜ
それほどまでに
子どもたちを?
5~6時間のインタビューに
検察部門の責任者モーリスが
平然と答える
パレスチナを弱体化するために
若者の精神を打ち砕くことで
従順にさせる
700人?
村の子どもを一掃するのに
良心の呵責などない
なんの問題もない
多大な貢献をした・・・
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この抑圧の真実、不条理から目を背けることはできないと
ユダヤ系イスラエル人の監督が撮影、制作、
7年の歳月を要したというドキュメンタリー。
…いろいろな人にこの状況について話し広め、
知ってほしい、問題に目を向けてほしい、
この映画を日本の子どもたちにも見てほしい…
監督の切実な願いが響く。
これまでにもパレスチナについて
私なりに知っていたつもりだったが、
所詮、外野に過ぎなかった。
ホロコーストの悲惨な歴史を知るがゆえに
それ以上に深く知ろうとしなかったと
今、つくづく思い知る。
できるだけ早く、できるだけ多くの人に見てもらいたい。
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相互貸借(県立図書館)でちょうど届いた二冊
☆『パレスチナの民族浄化~イスラエル建国の暴力』(イラン・パぺ /法政大学出版局/2017)
☆『パレスチナ/イスラエル論』(早尾貴紀/有志舎/2019)
「まえがき」には、日本に関わる反省的視点も念頭に置きながら読み進めてほしい、日本も直接、間接に関わっている、とあった。
表題は「パレスチナとイスラエル」ではなく、曖昧にスラッシュを用いざるを得ない理由がある。三部三章の構成で、全九章から成る。第Ⅰ部は思想編、第Ⅱ部は表象編、第Ⅲ部は歴史編。しかし、どの章も独立して読めるようになっているので、関心に応じてどの章から拾い読みしてもらってもさしつかえないとあった。
Ⅰ部は後回しすることにして、第Ⅱ部第四章 〈記憶の抗争~サボテンをめぐる表象〉を拾い読みした。
・1948年は国家を手に入れたユダヤ人にとっては「祖国の建国記念日」、先住のアラブ・パレスチナ人の側からすれば「ナクバ(破滅、大災厄)/一九四八」と記憶される。
・イスラエルのシンボルとしてのサボテンがイスラエル近代美術展の主役として神奈川に作られ、パレスチナのアレゴリー(寓意)としてのサボテンが密やかに山形に応募され敗北した。
ダニ・カラヴァンのモニュメント作品(2001年)
ロン・ハヴィリオの映画『エルサレム断章』(1997年)
「記憶」を喚起する芸術家、国際的に名声を得ている二人を名指し、その「横領」を鋭く指摘している。オリーブ樹、サボテンの「記憶」は、パレスチナの、記憶であり歴史であり文化なのだと。
一方、『サボテンに魂はあるか?』は
1989年の映画祭に応募されたが、選考に落選し正式出品にも至らなかった無名のドキュメンタリー映画、
「パレスチナの老人たちが、サボテンを探し歩く。サボテンが群生しているのが見つかる。その側には、崩れかけた壁の一部があったり、サボテンの周囲は単なる平地になっていたりする。老人たちはかつて自分たちの住んでいた村の場所を探していたのだ。
1948年とその前後、実に多くのパレスチナ人の村が、ユダヤ人の武装組織(建国後はイスラエル軍)によって破壊された。その数は400以上に達するとされる。…文字どおり一切の痕跡も残さないほどに破壊され尽くした村が、かろうじてその所在を示しえたものがサボテンであったのだ。サボテンは、アラブ・パレスチナ人の村の生け垣としての役割を果たしていた。その村がたとえブルドーザーで根こそぎにされ、家屋が完全に消滅し、サボテンも潰され刈り取られても、しかし、地中に根を残すサボテンだけは後からまたそこから生えてくる。つまり、サボテンはかつてそこにアラブ・パレスチナ人の村が存在していたことを示しているのである。」
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現在、ガザ地区の死亡者は2万674人にのぼると、テレビが伝えている。