小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

月を眺めながら…

今宵は十五夜
雲間から輝きをみせる仲秋の名月を
飽きずに眺めています。


この10日ほどの間の
別れと出会い、できごとなど、
まとまらぬままですが、書き記したいと思います。

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身近に思う方たちが日を重ねて逝かれた。


四人の母親のTさんは59歳
「思いやりのあるあたたかい人でした」
奥さまに捧げた喪主の言葉が悲しく深く、涙。


45年に及ぶご近所さんのYさんは76歳
「朝一番にブログを読むのが楽しみ…」
そのひと言が私のひそかな励みにもなっていた。


そして、「山の家・昭和の音と映像資料館」の主、96歳の山崎久雄さん。
教職の傍ら、棄てられたラジオや電気蓄音機を収集、修復し、当時の音が再現できる形で、1万点以上の資材を保存してこられた。消えゆく資料を守る立場から、昔ばなしの収集・保存を提案され、図書館での「昔話クラブ」誕生のきっかけとなった。

早朝の図書館でゴマダラチョウの羽化をビデオ撮影して資料にしてくださった。2001年夏の「センス・オブ・ワンダー」上映会は、山崎さんなくしては実現不可能だった。2004年秋の読書週間には第9代目の一日館長を務めてくださった。

https://hitokoto2020.hatenablog.com/entry/2020/08/24/113827
https://hitokoto2020.hatenablog.com/entry/2020/08/29/154659
https://hitokoto2020.hatenablog.com/entry/2020/08/31/203957
https://hitokoto2020.hatenablog.com/entry/2023/10/06/121716

昨年秋には思いがけないところで娘さんに出逢い、連絡先を教えていただいた。すぐにも電話すればよかった。4年前の夏、わざわざ資料を送ってくださった折に、思いきってお訪ねすればよかった。あとになって悔やまれることばかり。

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12日(木)は「詩をたのしむ」読書会。
その日も、すてきな本に出逢えた。

宮沢賢治を読むつどい」でご一緒しているSさんが初参加。
傘寿を超えたSさんのTシャツの胸の文字は

フィンランド語で《ELÄMÄ ON KAUNISTA》

スマホ達人のきりりんさんがさっそく調べると
おお! 《人生はすばらしい》 
なんと心地よい言葉だろうか。

途中からYさんが加わった。自己紹介で、8年前に亡くなられたある方のお身内とわかって、あまりの不思議な縁に互いに驚いた。小さな図書館の頃の懐かしい思い出が一気に蘇った。3年前、愛車ヴィッツと別れるときには、峠のお墓を訪ねたのだった。


最後に水野スウさんが『現代詩手帖』から
ゼイナ・アッザームさんの「おなまえ かいて」
ガザの悲痛な声が胸に迫る。

 

ようやく手にした
アーティフ・アブー・サイフさんの『ガザ日記』は、
2023年10月7日~12月30日、
ガザを脱出するまでの85日間の記録。

10月25日には、「…ガザの人々が手や足にペンや油性マジックで自分の名前を書くと言う風習は、粉々に吹き飛ばされた後に遺体の身元が確認できるようにするための工夫だ…一つの民として、私たちは記憶されることを望み、自分の物語が語られることを望んでいる。」


11月29日、「…今日はパレスチナ国際連帯デーだ。1947年に国連がパレスチナを分割し、ユダヤ人の国家とアラブ人の国家とすることを、賛成多数で決定した日だ。ユダヤ人の国家は翌年に実現したが、そのために、80万人のアラブ人が追い出された。男は撃たれ、女はレイプされ、村には火が放たれ、町の人々は虐殺された。テロが、パレスチナの半分を破壊して、新しい国家を誕生させたのだ。パレスチナ人はそれをナクバと呼ぶが、75年経った今でも、世界の他の人々はその言葉の意味さえ知らない。ちょうど今、私たちがこの戦争を「新しいナクバ」だと言っても、世界は学ぼうとしないように。」
 
戦争の狂気の中で、
今を生きる人たちがいる。
ガザで何が起きているかを知ってほしい。

アーティフさんの声が響く。


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14日(土)、友人夫妻と富山県南砺市の福光美術館へ。福光は、棟方志功さんが愛し、愛された地。猛暑日だったが、『板上に咲く』の著者・原田マハさんとお孫さんの石井頼子さんの記念対談に、ファンがつめかけ、会場となったロビーの混雑ぶりはこれまでにないほどとか。


『板上に咲く』は、志功と妻チヤが主人公。
図書館から借りて、序章から終章までの59年間を一気読み。
純粋でひたむきで強烈な才能を持つ志功、
夫を信じ、明るく支え続ける妻が眩しい。

「我(ワ)は、ゴッホになる」と、ゴッホに恋焦がれた青森の貧乏な男が、いつしかゴッホを超えて、世界のムナカタになった。そのムナカタの命にも等しいだいじなものとは…。

志功の世界をもっと知りたくて、図書館から『棟方志功』(別冊太陽)を借りた。「棟方をめぐる人びと」の中に、日本国憲法草案の作成に関わった女性、べアテ・シロタ・ゴードンさんの名を見出した。

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昨日は、シグナスロビーでの問谷犀方(元子)さん主宰の第15回「遊書会」の作品展へ。諸事情で作品展は今回で最後とか。元子さんは金子みすゞの「石ころ」、Mさんは竹久夢二の「宵待草」、後拾遺集の歌…会員の皆さんや子どもたちの作品など、ゆっくり鑑賞。泳ぎの達者な夫を偲ぶ元子さんの自詠、御父上の遺作にも心惹かれた。


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友人の紹介で読んでいる本

・『ガザ日記』(アーティフ・アブー・サイフ/中野真紀子訳/地平社/2024.5.29)~県立図書館
・『志縁のおんな-もろさわようことわたしたち』(河原千春 編著/一葉社/2021)~高岡市立図書館
・『板上に咲く MUNAKATA:Beyond Van Gogh』(幻冬舎/2024.3)

その他、図書館から借りている本

・『棟方志功 仏も鬼も人も花も愛おしい』(別冊太陽/2023.10/平凡社
・『新編 激動の中を行く-与謝野晶子女性論集』(与謝野晶子/もろさわようこ 編集・解説/新泉社/1970初版/2021新版)~県立図書館
・『野生生物は「やさしさ」だけで守られるか?』(朝日新聞取材チーム/岩波ジュニア新書/2024.7)
・『武井武雄 幻想の世界へようこそ』(求龍堂/2024.8)
・『光れ!泥だんご』(加用文男 監修/講談社/2001.12)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。