小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

人とくらしたワニのおはなし~その2~

3月30日の地元各局の夕方のニュースは金沢気象台のサクラの開花発表。ソメイヨシノの標本木を見上げて、お二人の職員が数えます。午前中はまだもうちょっとでしたが…午後になって、一つ、二つ…五つ、「六個咲いていまして開花基準を満たしているので開花です」と嬉しそう。犀川の数えきれないほど咲いている桜並木も映し出され、なんだか可笑しくておかしくて、いよいよ春本番です。


4月1日、今日はエイプリルフールです。
何年前だったか、どんな内容だったか思い出せないのですが、東京新聞の驚くようなステキな記事に大喜びしたのも束の間、真っ赤なウソだったと分かって、やっぱりね~とみんなで大笑いしたことも懐かしい。当時、世の中がそれなりに平和で余裕があったのかもしれません。

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『人とくらしたワニ カイマンのクロ』
(文 マリア・エウへニア・マンリケ/福音館書店/2022.2.10)

これは、ベネズエラでほんとうにあったというお話です。
やさしく、温かい、穏やかなきもちに満たされる絵本です。

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生後わずか3日でお母さんを亡くしたカイマンの赤ちゃんは、動物が大好きな「ファオロ」に引き取られ、「クロ」と名づけられ、こどものように可愛がられて育ちます。手のひらほどの大きさもなかった赤ちゃんはどんどん大きくなって、3メートルほどにもなるのです。


クロをひと目見たさに、ファオロの宝石店に並ぶ人たち
ファオロの結婚式、誇らしげなクロ
クロの背中に乗って遊ぶ楽しそうな子どもたち
幸せな光景が明るく細やかに描かれています。

 

1972年、ファオロは心筋梗塞でなくなりました。お通夜のために棺を応接間に置くと、クロは棺に飛びのり、自分から下りてくるまで、だれも棺から引き離すことができませんでした。

クロは、4ヵ月間!なにも食べませんでした。
応接間には4年間足を踏み入れようとしませんでした。
そして20年後、、、白雪姫?になったクロ。


「愛、それは 純粋な気持ちが
うずをまく つむじ風。
荒々しい 獣にさえ
甘い言葉を ささやかせる」

本の扉には、チリのフォルクローレ楽家
ビオレータ・パラ(1917-1967)の「17歳に戻れたら」の
詩篇がまるで花束のように添えられていました。

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☆現在生息するワニの種類は23~24種。大きく分けると「クロコダイル」と「アリゲーター」の二つに分けられるそうです。頭の形、下あごの歯の見え方、歩き方、生息地などの違いがあって、漫画『ペリリュー』に登場したのは「クロコダイル」かな。「アリゲーター」は中南米など生息地域が限られていて、「カイマン」は「アリゲーター」科に属するらしい。

☆友人のマリアさんの絵本をモモリンさんに紹介したのはスペインに住むYさん。実は、そのYさんは一年前に《コロナに感染して初めてわかったこと》(2021.5.8ブログ)で貴重な闘病体験を私たちに知らせてくれた方なのです。

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』①~⑪読了

リクエストの本を受け取りに図書館へ。
2月27日のブログ《戦争は悲劇です》で紹介した
穴水図書館蔵の『ペリリュー』(武田一義/白泉社
最後の、9、10、11巻です。

副タイトルは《楽園のゲルニカ
原案協力は平塚柾緒さん(太平洋戦争研究会)
30冊近くに上る参考文献をもとに書かれた漫画、

75年前のペリリュー島と今のウクライナの悲劇が
重なり合い、なんとしても戦争を止めなければと思う。

* * *

一万人を超える日本軍が玉砕してもなお、
終戦を知らず、一年半もの間、
隠れ潜んで生き延びた人たち
戦い続けなければならなかった人たち

なぜ、なんのために。。。

1947年4月22日、投降に応じ整列する日本兵
34人の写真が胸に迫ります。


「最終第11巻の表紙。生き残ったもの、
戦死した者たちが全員楽しそうに
南国の海を泳いでいる。素晴らしい絵だ。」
(zukunashitosanさんのブログより)

直接、確かめたいと思った絵、
本当にすばらしい表紙でした。

* * *

それにしても、、、
いくら探しても見つからなかった遺体…
吉敷くんは、いったい、どこに消えた?

島の神様に見初められて
神様のところに?

なにか大型の動物が持ち去った…?
いや、米軍の爆撃で
ジャングルの動物も死に絶えていたはず…

物語のラスト、不思議な謎は解き明かされ
全ての命は楽園の海に繋がっていることに
読者は納得させられます。

 

 

 

『 For Sama 』

爆撃でことごとく破壊される街
ロシア軍の戦闘機の爆音
自由を求め、抵抗する人たち
血まみれの負傷者、死者が
次々に病院に運び込まれる
その病院までもが、標的にされていく。


これは
2012年4月~2016年12月の
シリアの都市アレッポの映像。

NHK「ドキュランドにようこそ」で放映された
ワァド・アルカティーブさん撮影・編集の
『 For Sama ~娘は戦場で生まれた~ 』
2019年カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞作品。


「こんな事態を世界が黙って見ているなんて
私たちは思ってもみなかった」


ワァドさんの言葉が、今のいま、深く胸をえぐる。
アレッポは、、、今のウクライナ

~~~~~

ワァドさんはジャーナリスト、
夫のハムザさんは医療現場で奮闘する医師。

2016年2月7日
戦火のもとで授かった娘は「サマ」
アラビア語で「空」を意味するという。

わたしたちが愛し求める空は
戦闘機も爆弾もない空
そこに見えるのは太陽と雲
そして鳥たちだけ…


~かわいいヒヨコたち
母さんのまわりを楽しくさんぽ
水をのみ「おいしい」とないた
うれしくなって神さまにおれいする~

歌をうたっておチビちゃんをあやす。

* * *

… 愛する娘
私たちのたからもの
でも、
こんな世界に生まれてしまった

あなたを生まなければよかった
彼と出会わなければよかった
実家を離れなければよかった …


あなたの両親がなんのために戦ったのか
わかってほしいと、戦場で必死に撮り続けた

『For Sama』

天使のようなサマ

* * *

慎ましやかな日常の暮らし
ささやかな家族の幸せを
戦争は
いともやすやすと壊してしまうのだ。

CDを聴きながら

最近まで元気そう、だったテニス仲間のMさんが
59歳という若さで旅立ちました。
大好きなテニスを楽しみながらの四年間の闘病でした。

テニスの練習の合間に、ふっとコートから姿を消して
タケノコやら、ワラビやら、タラの芽やら、
一抱えして戻ってきて、私たちに分配…
山菜採りの名人でした。

愛称は「シェフ」
地中海風のモダンな料理もなかなかの腕前です。
安納芋の焼き芋の格別の美味しさも、
Mさんから教わりました。

25年前のひとこまも思い出されます。

― その本は?

テニスコートのベンチで
Mさんが読んでいたのは新刊の『神童』(山本茂/文藝春秋社)

そして、イチオシで薦めてくれた
『神童(幻のヴァイオリニスト)渡辺茂夫』

すばらしいCDを、Mさんを偲びながら
久しぶりに聴きました。

***

涙がでるほどの美しく哀しい響きに、ウクライナを思います。
子どもの犠牲者は103人に達したそうな。(16日発表)
ロシア軍の無差別攻撃は日に日に激しさを増すばかり、

かけがえのないはずの命が
いともたやすく数字に置き換えられていく
不条理…

* * *

こんな、ウクライナ語のことわざがあります。

《私の別荘は、ずっと外れにある》

―…「今、会話の話題になっていることを自分はよく知らないし、自分には関係もない」ということを表わしています。… ほとんどのウクライナ人にとっては、(外国人がそこにいない限り)根ほり葉ほりきくことはあまりよしとはされていません。そして、必要のないところに首をつっこまないよう、お互いのプライバシーを尊重する傾向があります。― 『誰も知らない世界のことわざ』(エラ・フランシス・サンダース/創元社/2016)より

今、そのプライバシーは完全に破壊されています。

いま生きているということ

明日はゴミ収集日。
小さなゴミ袋を出しに行って
ふっと星を見上げていたら、
谷川俊太郎さんの『生きる』が
あふれてきて、胸いっぱいになった。

この詩に出会ったのは20年前の
第30回「出会いの夕べ」。

福井県三方町図書館の車いす司書さんの
河原正実さんが語りかけた《平和・命》

「 …最後に河原さんが大好きな詩、
谷川俊太郎さんの『生きる』を
静かに想いを込めて聴かせてくださった。

生きているということ 
いま生きているということ 
それはのどがかわくということ 
木もれ陽がまぶしいということ 
ふっと或るメロディを思い出すということ 
くしゃみすること 
あなたと手をつなぐこと… 」

~『ひと言・人・こと』(2002.7.14)~

* * *


時差7時間、
いま、ウクライナ
夕方の六時、夜がはじまる。

いま『生きる』の一行一行が、
これまでにも増して愛おしい。
そして切ない。

~~~

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

『ポケット詩集Ⅱ』(2001.10/童話屋)より

戦火の中で配信を続ける人たち

日常生活の中で突然起きたクーデター。
ミャンマーの激変について知ったのは、
太田光のつぶやき英語》で見た一本の動画だった。

2月1日の朝、首都ネピドーの空き道路で、
いつもどおりにエアロビクスに熱中している女性。
その背景にとらえられたのは…
広い道路を連なり進みゆく武装車両。
向かっている先は…国会議事堂
この日から、一夜にして国の形が変わってしまった。

* * *

それ以来、見るようになった《つぶやき英語》
今夜は、2月にキエフの街歩きを投稿してしていた男性、
Jesterboydさん(37歳)のオンラインインタビューがありました。
ボグダンさんと同じくウクライナの一般市民です。


=日本語訳の字幕です=

ここは今のところ静かだよ
でも夜はほとんど眠れないね
いろいろなことが同時に起きるから
たまに何がどうなっているか
わからなくなってしまうんだ
簡単にいうとそういう状況だ

心の準備はしていたつもりだったけど
いざとなると準備できていたとは言えない
どれだけ準備して
どれだけ想像していたとしても
戦争が実際に始まると
想像通りにはいかない

僕にとって
配信することは武器なんだ
武器といっても
銃のように人を撃つわけではなくて
ありのままの現実に光を当てて
それをみんなに見せるんだ
何が起きているのか知りたい人には
真実はとても重要だ
知ってくれることによって
僕たちの物語は生き続けるんだ
それが配信を続ける理由だね

心配してくれてありがとう
世界中からの温かいサポートに感動しています
遠く離れた日本の人たちにも感謝しています

みんなとつながって団結すれば
この暗黒を乗り越えられます
自由と平等と正義のための戦いに
勝てます

* * *

彼の言葉を急いで伝えたくて
深夜に再びパソコンを開いたけれど

送信ミスをしてしまった。

・・・・・・

ミャンマーについては、以下のブログです。
(2021.2.26)ミャンマーからの留学生
(2021.3.1)未来のためのデモ
(2021.4.11)ミャンマー民主化の道「マ・ティーダ

自由を守るために…ボグダンさんの言葉

ロシアのウクライナ侵攻を受け、中立国のスイスに続き、
北欧二ヵ国が相次いでロシア制裁に参加を決断した。
世界一幸福な国、フィンランド
娘たちが暮らしているところ。
今、フィンエアーも飛べなくなった。
恐れていたことが、やはり現実になってきた。

* * *

キエフの現地情報を発信し続けている男性がいる。
4歳から15歳まで日本に住んでいたという
パルホメンコ・ボグダンさん、35歳。

・・・・・・

ゼレンスキー大統領が頑張っているから、
彼がいるから自分たちも勇気をもらって頑張れる。

ウクライナは豊かな土地に恵まれていて、
常に攻められてきたが攻めたことはない。
この土地が奪われたなら、
その隣の土地で畑を耕すような人々。

しかし、自由を奪われるのは何よりつらい。
団結して闘い、死んだほうがいい。

ウクライナは世界のために戦っている。
NATOも、国連も、アメリカも、何もしてくれない。

今、二つのシナリオがある。
それは、ロシアは10日間の予算しかない。
5日過ぎた。あと5日持ちこたえればなんとかなる。
もう一つは、ロシア国民が本当のことを知り、
ロシアの中で大規模なデモが起きること。

8年間、ウクライナは戦ってきた。
ヨーロッパにも期待していない。
だれも信じてくれなかった。
日本人も。
それは伝わっていなかったということ。
世界の人たちに何が嘘か、何が本当か見破る力を…

・・・・・・

たまたまつけた午後のテレビ番組。
日本語を駆使することで真実を伝え、
祖国の状況を多くの日本人にわかってもらいたい。
危険が迫る中でのリポートでした。

ボグダンさんの言葉はわかりやすく、力がありました。
よくぞここまで日本語を学んでくださいました。

多くの方に伝えたいけれど、
急いで書き留めた私のメモでは言葉が足りません。
YouTubeの再放映を望みます。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。