小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

平和の詩&村上春樹

一晩で読めますよ~と、先日、テニスコートでバトンタッチ式に手渡されたのは『猫を棄てる』(村上春樹著/文藝春秋)。子供時代に父親と一緒に海岸に猫を棄てに行ったときの思い出から始まって、父親の生きた時代のことが、淡々と、率直に、丁寧に語られ、読みやすい短編。背景に流れていたのは父の戦争体験。。。

こんな一文が引用されていることにはっとさせられた。

(藤田茂は1918年末~1939年騎兵第28連隊長として連隊の将校全員に、「兵を戦場に慣れしむるためには殺人が早い方法である。すなわち度胸試しである。これには俘虜(捕虜)を使用すればよい。四月には初年兵が補充される予定であるから、なるべく早くこの機会を作って初年兵を戦場に慣れしめ強くしなければならない」「これには銃殺より刺殺が効果的である」と訓示したと回想している)(吉田裕『日本軍兵士』/中央公論新書)

村上春樹さんはあとがき「小さな歴史のかけら」で、「…僕がこの文章で書きたかったことのひとつは、戦争というものが一人の人間―ごく当たり前の名もなき市民だ―の生き方や精神をどれほど大きく深く変えてしまえるかということだ。そして、その結果、僕がこうしてここにいる。父の運命がほんの僅かでも違う経路を辿っていたなら、僕という人間はそもそも存在していなかったはずだ。…」

「継承」という言葉の意味も深く、読めば読むほど考えさせられて、この本は1週間ばかり手元にあった。

89歳の語り部、大城藤六さんが「米兵より日本兵の方が恐ろしかった」、「日本軍は住民を守らない」と語る虐殺やガマの追い出しなど、戦争の真実を伝える教育の重要性をと訴える昨日の新聞記事とも重なった。

23日には、沖縄全戦没者追悼式で、高校三年生の高良朱香音(たからあかね)さんが朗読した「平和の詩」。テレビで観て、昨日の新聞で全文を読んで、YouTubeで何度も視聴した。

 

『あなたがあの時』

…あなたが見つめた希望の光 
私は消さない 消させない…

 

心を込めて、ゆっくりと、まっすぐに、揺らぎなく、「平和な世界を創造する」ことを誓う若いひとの眼差しを、私もしっかり受け止めよう。「平和を求める仲間として」!

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。