小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

梶井幸代先生のこと

米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」の中に、日本からは
大坂なおみ選手と伊藤詩織さん、二人の勇気ある女性が選ばれた。

先日の北陸中日新聞連載の「わがまちの偉人」は、8年前、102歳で亡くなられた
梶井幸代先生だった。先生がご存命なら、この女性たちの活躍にどのような賞賛
の言葉を述べられるだろうかと思う。

先生に初めてお目にかかったのは、図書館オープン翌年の1997年。
秋の読書週間に開催した第4回「出会いの夕べ」のゲストにお迎えしました。
先生は87歳、椅子をお勧めしましたが、顔が見えないからとずっと立ったまま。
これまで歩んで来られた道、今の想い、女が一人ひとり変わらねばならないと
温かく、深く、凛として語られる先生の姿、声が鮮明に思い出されます。

「出会いの夕べ」はその名の通り、閉館後の夕方7時半から開かれた催しです。
カウンター周りのささやかなスペースは、《本に囲まれて著者と出会いませんか》
のキャッチフレーズにぴったりの会場で、丸椅子とスツールが大活躍しました。
マキシンが帰国したこともあり、最初の1、2年は国際交流も織り交ぜました。

第1回のゲストはエッセイストの水野スウさん『出逢いのタペストリー』
第2回は県国際交流員の甘素栄(カン・ソヨン)さん「近くて遠い国:韓国)
第3回は国立石川高専の浅見洋教授「私の出会った人々~(高橋ふみ)」
そして、第4回、梶井幸代先生『女は三度の老いをみる』

梶井先生は、金沢女子短大教授職を退かれた1981年、70歳というお年で、
《町の中の女の学問所》「北陸婦人問題研究所」(北婦研)を設立された。
平成18年発行の『北陸婦人問題研究所設立25周年記念誌~私たちは何を
学んできたのか~』には、25年のあゆみと共に、、古典講座、女性史講座、
北陸女性学講座、女性と福祉を考える講座、女性と環境を考える講座、
万葉講座、短歌の会、憲法を学習する会、など多岐にわたる深遠なる学びの
足跡が記されています。会報誌『かいほう』は「会報」と「解放」の掛け言葉。
最終号となった77号(2008年)の巻頭言を紹介したい。


   「全会員の解放こそ」        所長 梶井幸代

  北婦研の最後となる原稿を私は書いている。北婦研は27年続いた。
 こういう私的な団体は、いつはじまっても、いつ終わってもよい。
 終わる時はいさぎよく終わるとよい。27年をいさぎよく終わるということは、
 27年を会員一同充分楽しんできた結果である。これでこんなグループを
 作らないならいさぎよい。しかし人それぞれだから、私はもう一度こんな
 団体を作って運営してみようと思う人があったら、これも自由である。
 民間団体の自由というもので、力が尽きればそれで終わり、力があれば
 そこから又始めてもよい。団体は人々の寄り集まり、自分の力がつきても
 又新しい力を持っている人があれば、その人が旗あげしてもよい。
 しかしともかく一応は終わったのである。
  一番すばらしいことは全会員が解放されたことである。解放された全員が
 何をするか。一人一人が自己を回復し、何を見出すか、期待して待つべき
 ことである。

 

新聞には「…梶井が育てた女性たちは、今も月に一度、金沢市内で集う。そこは
女性が本音で語り合える場になっている。」とあった。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。