小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

岳さんから教えてもらったこと

3日前に録画しておいたBS1スペシャル「ゴミが教えてくれたこと」。
タイトルから勝手に想像していたゴミ問題とは全く違っていた。
ゴミ収集の仕事をしている若い父親の150日間の記録だった。
信念をもって仕事に向き合う姿が頼もしく、本当にすばらしかった。

清掃会社で50人ほどの部下を率いる、その人は岳裕介さん。
彼の担当は200軒ほど、街が寝静まっている深夜、ゴミ回収車に乗り込む。
彼は、走って、走り回って、、、手際よく回収する。
そのうち、明るくなってきて、
ゴミ袋をあさるカラス、散らかったゴミ。
岳さんは黙々と拾い集め、道路を清掃する。

ゴミと一緒にペットボトルやあき缶が無造作に入っていたり、
穴があけてないスプレー、ビンや皿などの危険なモノが
ごちゃ混ぜの袋もある。

お皿一枚でも、事業者の店にきちんと言いに行く。
一緒に街を良くしていくためにも、なんでこうしたのか原因を探らないと、
同じことが繰り返されるからと、穏やかに粘り強く説得する。

若い頃に喧嘩、窃盗、万引きを重ねたと語る岳さん、
ゴミくず同然の過去の自分はなくしたいくらいだと言う。
23歳で今の会社に就職、27歳で長男が生まれて、
自分の中のスイッチが切り替わった。
子どもが不自由なく生活できるように、がんばろう!でっかくなろう!

しかし、どうしても忘れられないのは、差別と偏見。

「あのトラック、くせいなー /// あんなとこ走るんじゃねえよ」

道を歩いていた2、30人の学生たちからの嘲笑。
色々学び、知識もつけている(はずの?)人たちの言葉に、

ろくでもないやつの仕事、底辺みたいな仕事なんだと、
自分でも思っているからしようがないのかなと落ち込んだ。

そんな岳さんが、人の心に触れ、トラウマを乗り越えて、
次第に街の人たちのゴミに対する意識をも変えていった。
岳さんの語る言葉には確かな人生があった。

「逃げてたってことですね。
自分自身の中で変えてかないと周りも変わらない。」

「子どもとかって、やっぱり父親の背中を見ている。誇りをもって、
自分はこういう仕事をしているのをかっこいいと言われるように。」

「ゴミはゴミでも夢がつまっている。ゴミは夢です。」

「この世の中で価値がないものなんかない。
全てが意味があるモノ。必ず何かしら役に立ってるんだ。
だからやっぱり存在しているわけですから。」

 

眠っている住民たちに迷惑をかけないように、停車の音にも気をつける。
クラスターの出た病院のゴミ、自分がやるしかないと危険を承知で担当する。
元旦の「明けましておめでとう」のラジオの中、いつも通りの作業をする。
岳さんはプロ中のプロだ!再放送はないものかと探すと、、、
なんと昨年、【プロフェッショナル】で紹介されていたと知って驚いた。

・・・《自分を拾う、夢を運ぶ〜ゴミ収集員・岳裕介〜》・・・
ゴミ排出量が年間122万トンにのぼり、日本の市町村で最も多い横浜市
日夜、人知れずゴミを回収するエキスパート・岳裕介は市内最大手のゴミ回収会社のエース社員。飲食店や病院などのゴミを1日に3トン以上、たった1人で回収する。効率を突き詰め、ゴミを回収する技術の数々。だが岳は効率だけを追求しているわけではなかった。回収現場でカメラが捉えた知られざる仕事とは…。コロナ禍でも決して立ち止まらない男の記録。(紹介文より)

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。