図書館の書棚に眠る、
知る人とて少ないであろう自費出版の本、
今も家族の哀しみを語り続ける本の声に耳を澄ます。
~ ・ ~ ・ ~
「新聞を見て、すぐにあの時の館長さんだとわかって…」
言葉少なにおっしゃって差し出された封筒をひと目見て、
あの時、本当にびっくりしたのです。
胸がいっぱいになったのです。
よくもまぁ、今までだいじになさって、、、
わざわざ遠くから会いに来てくださって、、、
思いもかけない嬉しい訪問だというのに、
あの日、私は予定が決まっていて、
どうしてもゆっくりお話することができませんでした。
~ ・ ~ ・ ~
その後、如何お暮しですか。
お元気でしょうか。
心なしかひとまわり小さくなられたような、
実直そうなお父さんの姿が今も忘れられず、
記載された番号に電話をしましたが繋がりません。
心当たりのありそうな方をなんとか探しあて、
ご家族の消息を伺うことができました。
お話によると、
訪ねてくださった時には、既に一年前に奥さまに先立たれ、
それから二年後の2010年4月、
後を追うように亡くなられたそうです。
それで、あの時はお一人だったのですね~
送った文書をわざわざ返しに来られたというのは
なにか覚悟をされてのことでしたか…
問いかけながら、似顔絵、数枚の写真、寄せ書き、、、
一頁、一頁、ゆっくり本をめくる。
本の表紙は、、、
画家で小学校の先生だった宮田耕二さん。
なぜ、今まで気づかなかったのか。
2001年10月8日、知人の画廊で催された個展で、
お目にかかり、言葉を交わし、
似顔絵まで書いてくださった先生が、その方だと。
その3年前に出版された本に繋がる方だったのだと。。。
* * *
23年の時を経て、
私は一冊の本のものがたりを辿っています。