小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

「風の電話」の物語

3月7日、《時をかけるテレビ》で
「風の電話~残された人々の声」をみました。
東日本大震災から5年後の2016年放送の番組です。
https://www.nhk.jp/p/tokikaketv/ts/WQGK99QWJZ/episode/te/7QM9RXZ9ZL/

ゲストのいとうせいこうさんは、出ている方々に尊厳を感じ、
余計なことはしゃべれないきもちだとコメントされています。

《つるひめさんのブログ》にこの番組が紹介されていて
背中を押していただいたようなきもちでメモをまとめました。
どうぞ再々放送がありますようにと願いつつ。


☆~☆~☆

岩手県大槌町の被災地の海を見下ろす丘の上、
白い電話ボックスがぽつんとあって
中には黒いダイヤル式電話がひとつ。

電話線のない不思議な電話です。

線ではつながらない帰らぬ人への想いを
風にのせてつなげることができる「風の電話」
設置したのは佐々木格さん。

 

震災でたいせつな家族を失って
あとに残されたひとたちが(海外からの訪問者も)

お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、お父さん、お母さん、
夫、妻、子ども、、、に電話で呼びかけます。


“いつもね、車がくると、帰ってくるかな-と思って”

“みんなそれぞれにがんばってる。あんたも安心して”

“もしもし、どこにいる このさむいのに風邪ひいてないか ばあちゃんも いっしょか はやくかえってこ どこでもいいから生きてろ さみしいぞ-”

“ときどきなんのために生きているんだか わからなくなるときがあるんだよ”

“ごめん、助けてあげられなくてごめん”

“・・・・・”…(なにも言わずにたたずむ人もいる)


風にのって伝えられた切ない想い。
これまでに4万5千人を超えるひとたちが
「風の電話」を訪問したそうです。


簾くん(15歳)は、どうしてもお父さんと話したくて
青森県の八戸から「風の電話」を探してやってきました。
トラックの運転手だった父親は
大船渡のところで津波に遭って今も行方不明です。

“父さん、、、みんな4人とも、家族全員でがんばってるから心配しなくていいよ。
お父さんは元気?聞きたいことが一つ…なんで死んだんだよ、なんで…
とにかくさっさと見つかってよ。ねえ、今どこにいるの。なにも見つかんないだけど。おかあさんが一番悲しんでるからさ。お父さんがいなくなって一番つらいのお母さんだからさ” “最後くらいさ、話がしたかったよ”


家に帰って、
簾くんはお母さんに「風の電話」のことを
ぽつりぽつり報告します。

つながってないから、
だからかけてもつながらないんだけれど、
父さんに話しかけたことや
話したいことがいっぱいあること。


小学生の陸くん。中学一年生の鈴さん。
そして保険の外交員をしながら子どもを育ててきた母親。
4人家族、互いを気づかいながら過ごした“5年”
あれからもう5年と言われるけれど、
うちらにしたらまだ5年しか経ってないとひとみさん。

家族一緒に過ごす時間がふえたけれど、
誰もお父さんのことを口にしないそうです。

・・・・・

簾くんの誘いで、
家族そろって「風の電話」を訪れました。

簾くんのあとに、
陸くんと鈴さんは二人一緒にボックスに入りました。
お母さんはひとりで入りました。

それぞれに抱えていたいっぱいのきもちを、
あふれる涙をぬぐいながら電話で話しました。
末っ子の陸くんも、
とうとうこらえきれずに泣き出しました。

話して、泣いて、
初めて心を開いて、会話ができた家族。
父親の死を受け入れ、希望をもって、
力を合わせて生きてゆこうとする母と子でした。

☆~☆~☆

*つるひめさんのブログで絵本を知りました。
『かぜのでんわ』(いもとようこ/金の星社/ 2014/2)

*『風の電話』(佐々木格/風間書房/2017.8)
「風の電話」のなりたちから現在までの活動を、著者自らの言葉で綴る。
県内の11館の図書館に所蔵。

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。