小さな図書館のものがたり

旧津幡町立図書館の2005年以前の記録です

「センス・オブ・ワンダーの図書館」と呼ばれていた旧津幡町立図書館。2001-2005年4月30日までの4年間、そこから発信していた日々の記録「ひと言・人・こと」を別サイトで再現。そこでは言い足りなかった記憶の記録が「小さな図書館のものがたり」です。経緯は初回記事にあります。

ほんとうの幸いとは?

蔵書点検で図書館は閉館中ですが、
シグナスの一室が使用できるということで、
細川律子さんを囲んで、
2月の読書会「宮沢賢治を読むつどい」が開催できました。

運よく寒さも緩み、金沢からの参加もあって7人。
12月1日に『黒ぶだう』『さいかち淵』をたのしんで、
1月はお休みだったので、ほぼ2ヵ月ぶりです。

***

今日の作品は代表作『虔十公園林』と『祭の晩』
子どもたちもよく知っている作品です。
私も馴染んでいる作品でしたが、
読書会で他の人の読む声を聴き、語り合うなかで
さらに賢治さんに一歩一歩近づけるのを感じます。

 

自分の名を意識して名付けたらしい「虔十」

「雨の中の青い藪を見てはよろこんで目をパチパチさせ
青ぞらをどこまでも翔けて行く鷹を見付けては
はねあがって手をたゝいてみんなに知らせ…」

「風がどうと吹いて
ぶなの葉がチラチラ光るときなどは
虔十はもううれしくてうれしくて
ひとりでに笑へて仕方ないのを、
無理やり大きく口をあき、
はあはあ息だけついてごまかしながら
いつまでもいつまでも
そのぶなの木を見上げて立ってゐる…」

そんな虔十が大好きです。
(私もちょっぴり似てる…ところがある)
そんな虔十が一生の間にたった一つ、
人に対して逆らって守った杉の並木。

…虔十がなくなってから20年近くたって…

「全く全くこの公園林の杉の黒い立派な緑、
さはやかな匂、夏のすヾしい陰、月光色の芝生が
これから何千人の人たちにさいはひが何だかを
教へるか数へられませんでした。

そして林は虔十の居た時の通り
雨が降ってはすき徹る冷たい雫を
みじかい草にポタリポタリと落し
お日さまが輝いては新しい奇麗な空気を
さはやかにはき出すのでした。」

こんな、深く、美しい文章で終わります。 

旧津幡町立図書館の記録「ひと言・人・こと」はこちらです。